2013年08月12日

第4回 リコピンフォーラム 「トマトでメタボを解消−トマト成分"13-oxo-ODA"」

第4回 『 トマトでメタボを解消 ―トマト成分"13-oxo-ODA" 』

昨年2月、京都大学農学研究科・河田照雄教授らから米国の科学雑誌「プロスワン」に報告された、私たちが日常食品としているトマトの成分「13-oxo-ODA」の脂質代謝促進効果」研究と、関連するメタボと肥満、脂質代謝異常について、京都大学のリリースを参考に解説します。
*研究組織 京大農学研究科(河田照雄)
        千葉県農林総合研究センター(津金胤昭)
        日本デルモンテ(稲井秀二)
        かずさDNA研究所(柴田大輔)

1. シンドロームX(エックス) ・ 死の四重奏
メタボリックシンドローム(以下、メタボ)は 「過剰なエネルギー摂取(過食)」「エネルギー消費不足(運動不足)」を原因として内臓脂肪の蓄積が動脈硬化を促進し、@脂質代謝異常(コレステロール血症) A高血圧 B糖代謝異常(糖尿病) C肥満を誘発、心臓疾患や脳疾患を発症しやすくするなど、危険度の高い症候群です。そして、@〜CはシンドロームX(エックス)あるいは「死の四重奏」ともよばれ、これら危険因子の重なりが「相乗的に」心臓疾患や脳疾患の発症危険度を高めることがわかっています。また現在、これら循環器系疾患の死因数はがんの死因数とほぼ同数になっています。
ですから、メタボは一連の危険な病気の出発点という理解が必要です。内臓脂肪の蓄積は動脈硬化を促進し、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症、高血圧、糖尿病、心臓疾患、脳疾患などを発症させる危険性を高めるからです。日本でも特定検診・特定保健指導で「内臓脂肪症候群」という名称で、「ウエスト周囲の測定」検診が取り入れられました。

2. メタボ(内臓脂肪症候群)の診断基準
@ウエスト(おへそ周り)が男性85cm以上、女性90cm以上で、
A-1 高血糖(空腹時血糖値110mg以上)
A-2 脂質代謝異常(高トリグリセリド(中性脂肪)血症150mg以上または低HDLコレステロール血症40mg未満)
A-3 高血圧症最大血圧130mmHg以上または最小血圧85mm以上
上記、A1〜3のうち2つ以上あてはまる場合、メタボと診断されます。
ウエストが男性で85cmとされたのは、内蔵脂肪が100cm2
(CTで確認します)を超えると、高血糖・高血圧・脂質異常の合併比率が飛躍的に高まることが調査(日本肥満学会)でわかっているからです。その調査に基づき、内臓脂肪100cm2はウエスト周囲計でほぼ85cmに該当するため、それが基準値とされたものです。また、女性は皮下脂肪の蓄積しやすさが考慮され、ウエスト周囲計は90cm以上とされました。
   
3. メタボを引き起こすライフスタイル(生活習慣)
メタボを引き起こすライフスタイル(生活習慣)は、最大かつ明確な危険因子として「過剰なエネルギー摂取(過食)」「エネルギー消費不足(運動不足)」、さらに喫煙、アルコールなども関係します。これは、日常生活で必要がないエネルギーを過剰にとっているという食生活が背景になっています。たくさんエネルギーをとって運動(身体活動)で消費する人はいいのですが、必要がないのにエネルギーを過剰にとる、すなわち「食べ過ぎ」こそが問題になります。この食べすぎでは、ジャンクフードなどに代表される低質な油脂(脂質)の過剰摂取も大きな原因となっています。また、喫煙者は非喫煙者より内臓脂肪が蓄積しやすいこと、アルコール常用者(週3回以上の飲酒者)では飲酒量とウエスト周囲計が相関するという報告があります。
そして、メタボを予防するライフスタイル(生活習慣)とは、この2つの危険因子をとり除いたライフスタイル、すなわち日常生活で必要のないエネルギーは摂らない― 「食べ過ぎ(飲み過ぎ)ない」ということ、摂取したエネルギーの過剰分を消費する身体活動(運動)の習慣をもつ」というライフスタイルです。
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4. 正しいダイエット―メタボから考える
ダイエットでも安易に下剤サプリメントに頼らない
ことも大切です。毎日の食生活(摂取エネルギー)を見直し、野菜中心にバランスのとれた栄養摂取(食生活)を心がけるが第一です。日常生活でジャンクフードやコンビニフードをとりつつ、ダイエットを考える・・・これでは意味がありません。ダイエット(肥満、便秘の解消も同様)の第一歩は、高カロリーで低栄養、偏栄養、過剰な添加物や調味料が使用されるジャンクフードやコンビニフードなどをストップすることです。肥満は高カロリーの摂取と野菜の摂取不足が共通します。特に、代謝を高める野菜のビタミン、ミネラル、フィトケミカル、食物繊維(ファイバー)の摂取不足が顕著です。
ジャンクフード&コンビニフード・・・カロリー(特に、脂質)だけ高く、低栄養で偏栄養の食品群。また、調味料や添加物が大量に使用されて味付けされるコンビニ食品群。ハンバーガー・スナック・スイーツ・ドーナッツ・インスタント食品・揚げ物・コンビニおにぎり・コンビニ弁当・コンビニ惣菜・コンビニサラダ・コンビニパン・アイスクリーム・チョコレートなど。アイスクリーム200Kcal、スナック菓子・パン300〜400Kcal、チョコレート600〜700Kcalなど。一日に必要なエネルギーは男性が2,300〜2,500Kcal、女性が1800
〜2,000Kcal程度。
肥満の解消(ダイエット)はメタボの解消と同様に、ライフスタイル(特に、食生活)を見直すことが大切になります「半年」で5%の体重減(1ヶ月0.5kg〜1kgの減量)で、肥満もメタボも大きく改善します。メタボ予防は@野菜・果実の摂取を2〜3倍にするA一日10,000歩のウォーキング、たったそれだけです。誰でも今日からはじめられます。

5. 地中海パラドックス―トマトとオリーブ油の地中海料理
さて、主題の「13-oxo-ODA」の話題に戻りますが、トマトは夏野菜の王者でバランスよく栄養素を含んでいます。こうした野菜の天然化学成分(栄養機能成分)はフィトケミカル(天然化学成分)とよばれます。紫外線や排気ガスなどによる活性酸素の誘発を防御するカロテノイド成分、リコピン・フィトエン・フィトフルエン・β-カロテンのほか、ビタミン類(BCE)・ミネラル(マグネシウム・カルシウム・カリウム・鉄・亜鉛など)やクエン酸・グルタミン酸など、実に豊かな栄養素を含んでいるのがトマトです。
トマトペースト、ピューレ、スープなど、トマトとオリーブ油をベースにしている地中海料理(イタリア・ギリシャ・スペイン・トルコなど)は世界一の長寿食、ヘルシー料理、究極のダイエット料理ともいわれます。この伝統料理を日常としている地中海沿岸は脂質の大量摂取と逆相関するように、メタボをはじめ循環器疾患(心臓・血管・脳疾患)が少ないことが注目されていて、「地中海パラドックス」とよばれています。そうした観点で、京大・河田研究室の研究成果は地中海パラドックスを証明したといえるかもしれません。ただし、この研究は肥満・糖尿病マウスを用いた動物実験であり、私たち人間ではどのくらいの意義があるか、今後の臨床研究が期待されます。

6. トマトの成分「13-oxo-ODA」の発見と研究成果
京大・河田研究室では@トマトに脂肪燃焼(脂質代謝)を促進するフィトケミカル「13-oxo-ODA」が含まれていることを世界で初めて発見したこと、Aこの13-oxo-ODAというフィトケミカルが脂質代謝異常を改善することをマウスの実験で証明したこと、この二つが研究成果とされます。
この実験の研究デザインは以下の通りです。
@肥満・糖尿病モデルマウスに、トマトのフィトケミカル「13-oxo-ODA」を含む高脂肪食を1ヶ月間(4週間)与える
A血液と肝臓での中性脂肪(トリグリセリド)の蓄積量を測定する
B肝臓での脂肪燃焼(脂肪酸の酸化)の促進を、遺伝子の発現によって確認する
Cエネルギー代謝の促進を、指標となる直腸の温度上昇によって確認する

そして、この実験の研究結果は以下の通りです。
@「13-oxo-ODA」を含む高脂肪食を与えたマウスでは「13-oxo-ODA」を含まない高脂肪食を与えたマウス)と比較し、血液および肝臓で、中性脂肪(トリグリセリド)の蓄積が30%抑制されたこと。
A「13-oxo-ODA」を与えたマウスでは、肝臓での脂肪燃焼(脂肪酸の酸化)促進を示す遺伝子発現が30〜60%増加したこと。
B「13-oxo-ODA」を与えたマウスでは、エネルギー代謝の指標となる直腸の温度上昇が確認されたこと。
以上が、この研究結果の概要です。

マウスの実験とはいえ、日常食であるトマト成分の検証ですから自分でも確かめてみたくなります。4)で地中海パラドックスのことをお話しましたが、地中海沿岸の人々にはメタボリックシンドロームや循環器系疾患が少ないというコホート(疫学研究)が他にも報告されています。この研究によってトマトにビタミンやミネラル、クエン酸、グルタミン酸はじめ、リコピンやフィトエン、フィトフルエン、β-カロテン、ルティンなど、カロテノイド成分のほか「13-oxo-ODA」という健康機能成分が含まれていることがわかりました。地中海沿岸の食文化、またトマトのちからに敬服します。
                                  (第4回 完)



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2013年08月06日

第3回 リコピンフォーラム 「リコピンと紫外線ストレス−英国皮膚科学会・英国BBC 」

第3回 『 リコピンと紫外線ストレス―英国皮膚科学会 ・英国BBC』

1. 紫外線に負けないサラサラ成分―トマトリコピンの抗酸化力
野菜や果実にはフィトケミカル(天然化学成分)とよぶ天然の防御機能成分が含まれ、多くが抗酸化力をもつ成分であることがわかってきました。酸化とは、酸素を利用する生物(私たち)の体内で発生する活性酸素の過剰被害です。身近な例では、鉄が時間とともに錆びたり、リンゴやモモを放置してると赤茶けるのが酸化です。そして、フィトケミカルの多くがこの活性酸素の誘発を抑制し、あるいは発生した活性酸素を中和、消去する働きをもつ天然成分であることがわかっています。
トマトやスイカに含まれるカロテノイド成分、リコピン・フィトエン・フィトフルエン・β‐カロテンやビタミンE(α‐トコフェロール)などの抗酸化成分は、紫外線で誘発されるもっとも毒性が強い「一重項酸素」という活性酸素を中和、消去する力が強い抗酸化物質です。

トマトやスイカはもっとも厳しい自然環境である夏を「旬」とするたくましい野菜です。今、旬の野菜を食べることの大切さが叫ばれていますが、なぜ、トマトが夏に旬を迎えるか、なぜ私たちは夏にトマトを食べるか、その理由を自然のめぐみ(摂理)として理解することができそうです。トマトは、紫外線や高温、害虫の多い、厳しい自然環境の夏に育ち、そして実ります。
トマトはそうした厳しい夏の環境に負けずに光合成で自己を護る成分をつくりだします。それがカロテノイドのリコピンやフィトエン・フィトフルエン・β‐カロテンやビタミンEなどです。真っ赤なリコピンは、トマトが紫外線による酸化を防御し、害虫を遠ざけ、しっかり実るためにつくりだす脂溶性成分なのです。リコピンを合成できないトマトもあって、そうしたトマトは赤くならないまま、固く、青く(緑色)まま、害虫に食べらり、枯れていきます。リコピンがあるとないは大きな違いなのです。リコピンを合成できないトマトは、トマトとして実ることができません。
   
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2. 紫外線ストレス
の防御
紫外線はトマトだけでなく、私たちにも大きなストレス(被害)を与えます。数十年前のように、夏に真っ黒に日焼けするのは危険といってもいいほど、紫外線の降下線量が増加しています。また、南半球では大規模なオゾンホール(オゾン層の大規模破壊)が観測され、ニュージーランドやオーストラリアでは皮膚がんが多発していることが報告されています。世界的に、そして日本でも皮膚がんは増加しているのです。
オゾン層というのは地上15〜30km以上の上空にあって、太陽の紫外線(放射線)を吸収してできる活性酸素(O3)の塊(かたまり)です。このオゾン層が猛毒の紫外線の多く(特に、毒性がもっとも強いUV-C)を吸収しているため、地球上で私たちが生きることができるわけです。近年、このオゾン層の破壊が進んでUV-AUV-Bの降下線量は数十年前と比べものにならないほど増加しました。紫外線被害はシミ、シワなどをはじめ、光老化や皮膚がん、白内障の進行原因でも指摘されています。

現在は女性だけでなく、子供からお年寄りまで、すべての人が紫外線を防御する必要がある時代
であることを理解する必要があります。余談になりますが、数年前、母子手帳から「赤ちゃんの日光浴のススメ」に関する記述が削除されました。また、ビタミンDの合成で日光にあたる必要性が指摘されますが、これは一日に10分程度です。今は、紫外線被害が深刻な状況であり、特に夏の厳しい紫外線防御は健康のために留意するべきことだといえるのです。
このことに関連し、紫外線は直射だけでなく、空間や路面などの反射―間接照射があることに留意しておいてください。また、地域的に沖縄・九州では北海道の1.5倍以上の降下線量が観測されています。

3. マンチェスター大学とNカッスル大学の研究(英国皮膚科学会・英国BBC)
紫外線による日焼けや光老化に関連し、トマトペーストの紫外線防御力に関する臨床研究(群間比較)がイギリスで報告されています。対象は20人で、10人はトマトぺースト(55g)とオリーブオイル(10g)の併用群、10人はオリーブオイル(10g)のみの群で、摂取前に紫外線をあてて皮膚の撮影を行い、摂取3ヶ月(12週)後に同様に撮影し、紫外線による日焼けの差を人で検証したものです。
この結果、オリーブオイルのみを摂取した群との比較で、オリーブオイルとトマトペーストを併用した群で紫外線による日焼けが33%も低下したことがわかりました。ただ、この差はSPF(Sun Protection Factor)で1.3という差ですので、直ちに紫外線防御クリームに代わるものとはいえません。しかし、カロテノイド成分のリコピンを含んだトマトペーストに紫外線防御力(活性酸素消去能力)があることが確認され、食生活で継続的にトマトを摂取することで活性酸素の防御能が高まることは有意な効果(マンチェスター大学・レスリー教授)とされました。

また、この研究でトマトリコピンが細胞内ミトコンドリアDNAの損傷を防御していることも確認され(ニューカッスル大学・マークバーチ教授)、抗酸化力に富んだトマトを含んだ食生活が皮膚(お肌)の防御に役立つことが示唆(英国皮膚科学会誌)されたとしています。これらの研究成果から、トマトやスイカに含まれるリコピンやフィトエン・フィトフルエン・β-カロテン・ビタミンEなど、脂溶性のカロテノイド成分の活性酸素防御力が注目されています。
天然成分の抗酸化成分ではカロテノイドと並んでポリフェノール(カテキン・アントシアニン・セサミン・イソフラボン・クルクミンなど)も注目されています。ポリフェノールは水溶性成分で、脂溶性活性酸素を誘発する紫外線の活性酸素防御力はほとんどなく、ビタミンCなどと比較的経度の活性酸素である水溶性活性酸素(過酸化水素など)を中和、消去する働きがあります。
                               
(第3回 完)

posted by 高原裕一 at 16:56| サプリメント&健康食品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月20日

第2回 リコピンフォーラム 「リコピンの摂取―トマトとオリーブオイル」

第2回 『 リコピン摂取―トマトとオリーブオイル 』

ちょっとゆったりして、リコピンを生みだすトマトとその摂取に関連してお話したいと思います。

1. トマトの起源と生産地
リコピンを含む野菜の代表であるトマトは、南米ペルーのアンデス高原を起源(原始野生トマト)とするナス科の野菜です。トマトはそのアンデス高原からメキシコへ、その後、ヨーロッパへ伝播、日本へは江戸時代に観賞用の植物(かぼちゃトマト)として中国から伝わりました(狩野探幽画・唐なすび)。明治時代になって食用とされ、現在のトマトの原型は昭和以降からといわれています。
そして、トマトは世界でもっとも生産量が多く、食用で利用されている野菜です(世界の生産量は約1億3,000万トン)。世界の主産地は、中国・アメリカ・トルコ・イタリア・インド・エジプト・スペイン・ブラジル・メキシコ・・・日本は約73万トンです。
日本の主産地は、熊本県(9万t)・茨城県(5万t)・北海道(5万t)・千葉県(4.7万t)・愛知県(4.6万t)・栃木県(3.5万t)・福島県(3.1万t)・群馬県(2.6万t)・岐阜県(2.5万t)・長野県(2.2万t)・福岡県(2万t)など。また、少ない産地は、富山県(0.13t)・福井県(0.18t)・沖縄県(0.22t)・大阪府(0.33t)・島根県(0.35t)などです。

2. 地中海式ダイエット
トマトは世界でいちばん食される野菜であるとお話ししましたが、地中海料理で有名なイタリア、スペイン、ギリシャ、トルコなどでは日常料理のベースになっています。パスタ料理だけでなく、トマトスープ、トマトピューレ、トマトソースなどの日常料理です。このことは日本でコンブやカツオなどから出汁をとるように、地中海沿岸はトマトを出汁にしていてトマトが入っている食事は日常的ということです。どちらも旨味成分はグルタミン酸(味の素の成分)です。地中海料理は、今究極のダイエット料理とも健康長寿食ともいわれますが、トマトとともにオリーブオイルがふんだんに使われるのが特徴です。
オリーブオイルはn9系とよばれる抗酸化力が強い(熱に強く、酸化しない)オレイン酸という究極のヘルシー脂肪酸が主成分です。また、通常の植物油は「種」から油をとりますが、オリーブ油だけは「実」から油をとるというのが特徴です。

3. トマト摂取とがん予防〜イタリアがん研究所(再稿)
イタリアの食生活は、北部(ミラノ・トリノなど)と南部(ローマ・ナポリなど)で大きな違いがあります。北部は牧畜が盛んで乳製品が豊富、南部はトマト、オリーブの栽培も盛んで地中海料理、トマト料理のメッカです。北部のトマト摂取量は南部の半分程度、その分、乳製品が多いわけです。伝統的な地中海料理のメッカである南部ではトマトを北部の2倍以上摂取しているそうです。その結果、南部の消化器がん発生率は北部の半分以下であるというイタリアがん研究所の報告があり、大きな注目を集めています。ちなみに、イタリアは日本の6倍、ギリシャは日本の10倍程度、トマトが食材として利用されています。そして、スープ、ピューレなどの家庭料理がオリーブオイルと相乗的に健康管理の源になっているようです。
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4. トマトの栄養
トマトはリコピンの宝庫ですが、それだけではありません。厳しい夏の環境を生き抜くために、ビタミンやミネラル、カロテノイドなどの天然成分が実に豊富です。リコピンもカロテノイドの一つですが、カロテノイドは夏の紫外線や高温、害虫などから自己を守り、しっかり育って実るという役割を担っています。
そもそも、トマトやスイカは夏というもっとも厳しい自然環境を「旬」とするほど、たくましい野菜です。夏野菜の共通は、水分(これは水ではありません)やビタミン、ミネラル、カロテノイド、ポリフェノールなどの豊富さです。

5.トマトジュース
地中海料理にトマトジュースはありません。
トマトジュースは日本独特のレシピのようです。同じように、トマトをそのまま生食するというレシピも世界的にほとんど見られないことです。これは、なぜでしょうか。
トマトはビタミンCなどの水溶性成分だけでなく、カロテノイド(リコピン・β-カロテン・フィトエン・フィトフルエンなどやビタミンEなど、脂溶性成分をたっぷり含んでいます。脂溶性成分とは、字のごとく、油に溶ける(油で分解される)栄養成分です。
油に溶けて吸収されますので、水分だけではせっかくの貴重なトマトの栄養が、私たちの体に吸収されません。
地中海料理をはじめ、トマトジュースや生食が世界的に見られないのはこのことに関係しているでしょう。水溶性の成分であるポリフェノールやビタミンなどは水に溶けて吸収されますが、脂溶性の成分であるビタミンEやリコピンなど、カロテノイドは油に溶けて吸収されるため、そのために油が必要なのです。
  
6.トマトとオリーブ油のレシピ
トマトとオリーブオイルで発展した地中海料理のレシピの背景が見えてきました。トマトの栄養成分をしっかり摂るためにオリーブオイルが必要であるということです。私たちの体は油がないとトマトの栄養をちゃんと吸収できないというわけです。この油はオリーブオイルに限らず、不飽和脂肪酸系の油脂であればいいでしょう(地中海沿岸はオリーブの産地)。トマトに含まれるカロテノイド成分、リコピン・β-カロテン・フィトエン・フィトフルエンやビタミンEは脂溶性成分であり、オリーブオイル(油)とともに摂ることで吸収できるということを覚えておきましょう。
それが、世界的にトマトジュースや生食がほとんど見られない理由なのです。地中海沿岸はトマト料理のメッカですから、そのことが経験的にわかっています。日本ではトマトジュースの売り上げが2倍になったそうですが、トマトジュースも食後(油を含む料理)に摂った方がいいということです。生食も同様に、油料理と一緒に摂るとトマトの栄養がしっかり吸収されます。トマトサラダにドレッシングやマヨネーズ(油)をかけるのはそういう意味があります。この油は質のよい油脂(不飽和脂肪酸系)を選んでください。飽和脂肪酸であるパーム油は禁忌です。

7.水溶性と脂溶性
水溶性成分は水で溶ける(分解される)成分です。トマトに含まれるビタミンCやポリフェノールなどは水溶性のため、水分があれば吸収されます。また、水溶性成分は水分と一緒に排泄されやすく、熱すると水分とともに失われやすいことから、水溶性ビタミンは2〜3時間ごとに摂る必要があるのです。逆に言うと、水溶性ビタミンやポリフェノールは必要以上には吸収されずに排泄されてしまいますので、体に蓄積することがありません。
脂溶性成分は水にほとんど溶けませんので、水分だけでは吸収されません。水に溶けませんので、水分をいくらとっても一緒には排泄されません。また、熱に強く、炒めものや油料理との相性がいいのも脂溶性成分です。ビタミンCは摂りやすく、排泄されやすく、熱に弱い。ビタミンEは摂りにくく、排泄されにくく、熱に強いと覚えておいてください。ですから、水溶性ビタミンは意識して多く摂り、脂溶性ビタミンはそれほど意識しなくてもいいといわれます。水溶性ビタミンにはビタミンB群やC、脂溶性ビタミンにはビタミンA(β-カロテン)やD、Eなどです。

8.天然物(野菜)を摂取する
食べた栄養を代謝するのに必要な微量栄養素であるビタミンやミネラルは、野菜など天然物で摂取すること
を大切にしてください。合成ビタミン(合成サプリメント)が流行していますが、合成された成分を栄養で摂るのは安易すぎます。天然と合成は、名前と化学構造式が同じ「異性体」です。異性体とは、右手と左手、鏡に写る姿のように重なりますが表裏、左右が逆です。異性体は「同じ、だけど違う」という事実です。また、合成成分は天然成分より吸収されにくいことが動物実験などでわかっています。
安価なサプリメント(特に、ビタミン系サプリメント)は、合成成分(合成添加物と同様)を素材にしたものが多くなっていますので、自分でよく確認し、注意するようにしてください。
同様に脂肪酸(油)は私たちの栄養として必須ですが、n6系(多くの植物油)ばかりでなく、n3系(EPAやDHA)、n9系の油脂(オリーブオイル)をとることも忘れないでください。また、動物性の油脂(肉)や植物油のパーム油やヤシ油など、すぐに凝固する飽和脂肪酸系成分ですから注意しましょう。

トマト(生食やジュースも)は、油料理とともに、あるいは油料理の後に摂る
。トマトの栄養をしっかり摂るために、このことをぜひ覚えていただきたいと思います。
                                 (第2回 完)
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2013年07月16日

第1回 リコピンフォーラム 「リコピンとがん予防―世界がん研究基金」

第1回 『 リコピンとがん予防―世界がん研究基金 』

がん予防に関連し、世界がん研究基金(WCRF ;World Cancer Research Fund)および米国がん研究協会(AICR ;America Institute for Cancer Research)による 『食物・栄養とがん予防-国際的視点から-』 が2007年に報告されています。
この報告について、国立がん研究センター・がん対策情報センター(ganjoho.jp) の「予防と検診」 「日本人のためのがん予防法―現状において推奨できる、科学的根拠に基づくがん予防法」のページで解説されています。この機会に閲覧し、参考にしてください。

 
1.がんは生活習慣病
がんの罹患は食生活・喫煙・運動など、生活習慣と関連が強いことが指摘されています。世界がん研究基金(以下、WCRF) と米国がん研究協会(以下、AICR)は、世界のがんリスクとがん予防に関する研究論文を評価、報告しています。同時に、「がん予防のための14条」を提言し、世界の30〜40%のがん罹患率を低下させる目標を掲げています。この報告で、運動(身体活動)が「結腸がん・乳がんを予防することが確実」と評価しています。

2.がんの罹患リスクと予防効果
WCRFとAICRは、世界の4,000編以上の研究論文(報告)を精査して、食物や運動とがんの罹患リスク、予防効果について 1)確実 2)可能性が大きい 3)可能性がある 4)根拠不十分 5)関連なし の5段階評価しています。食品の予防効果では、野菜・果実の摂取はほとんどのがんリスク(および肥満リスク)を  1)確実に下げる、または 2)下げる可能性が大きいとしています。これに関して、日本でも健康日本21(厚生労働省)などが、一日5皿の野菜+1皿の果実(合計350〜400g)を毎日摂ることを推奨しています。
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3.食品に含まれるリコピン、「がんを予防する可能性が大きい」
食品の評価では、トマトやスイカなどの「食品に含まれるリコピン」(カロテノイド成分)は、前立腺がんを 2)予防する可能性が大きいとしています。ただし、これは食品(トマト・スイカ・ピンクグレープフルーツ・グァバなど)に含まれる天然リコピンです。一部の人工合成されたリコピン(合成色素、合成サプリメント)ではないことに留意が必要です。
また、「食品に含まれるリコピン」ということであり、トマトやスイカなどのリコピンファミリーである β-カロテンやフィトエン・フィトフルエン・ビタミンEなど(リコピンと同じカロテノイド成分)など、リコピンと相乗的に働くことが評価、示唆されています。野菜の天然成分は一つの成分だけが単独で働くことはほとんどなく、他の含有成分と相乗的に働きます。ビタミンCはビタミンE やカルシウム、マグネシウムなどと、リコピンは β-カロテン・フィトエン・フィトフルエン・ビタミンEなどとともに活性化し、機能が働くことがわかっています。

この報告にはリコピン以外にもセレン(前立腺がん)、葉酸(膵臓がん)、カロテノイド(口腔がん・咽頭がん・口頭がん)、β-カロテン・ビタミンC(食道がん)など、 2)予防する可能性が大きいとしています。 「食品に含まれる」ということ、これはリコピン同様です。なお
、米国ではβ-カロテンやビタミンE などの人工合成サプリメントの単独摂取(大量摂取)がかえってがんの進展を促進する可能性があるとの報告もあります。特に、人工合成サプリメントは注意を要するといえるでしょう。


4.紫外線による活性酸素の
誘発

夏(5月から9月頃)の紫外線降下線量は秋から春の1.5倍以上であり、沖縄・九州エリアでは北海道の1.5倍以上です。近年はオゾン層破壊が進んで、いちだんと降下線量が拡大しています。女性だけがお肌を守るという意識ではなく、男女問わず、健康維持・皮膚がん・白内障などの予防を意識した紫外線防御が必要な地球環境になっています。これに関連し、十数年前にオゾンホール(大規模なオゾン層破壊)が確認された南半球(オーストラリア・ニュージーランド)では皮膚がんの増加が報告されていますが、日本でも皮膚がんは増加しています。紫外線は注意が必要な放射線です。
紫外線は私たちの体で 「一重項酸素」という非常に毒性が強い活性酸素を誘発します。この一重項酸素は脂溶性活性酸素ですから、水溶性活性酸素の中和・消去に働くポリフェノール成分(アントシアニン・カテキンなど)やビタミンC 、SODなどはほとんど役立ちません。この紫外線が誘発する活性酸素(脂溶性活性酸素)を中和・消去するのはビタミンEやリコピン・ルテイン・アスタキサンチンなど、カロテノイド成分であることをぜひこの機会に知っていただきたいと思います。

5.カロテノイド成分−リコピン・ルテイン
リコピンとルテインはカロテノイド成分の代表です。この抗酸化力が強いカロテノイド成分は私たちの体で合成できませんので、野菜、特にトマト(トマトは世界No1の食材です)などから摂取する必要があります。
私たちの体(血液や組織)には野菜で摂ったリコピンやルテインがあります。トマトをスープやピューレ、ソースなどで常食としている地中海沿岸(イタリア・スペイン・ギリシャなど)の人々は、特にリコピンの血清濃度が高いそうです。
また、イタリア北部(ミラノ・トリノなど)と南部(ローマ・ナポリなど)のトマト消費量と消化器がんの罹患率についてイタリアがん研究所が報告しています。報告では、イタリア北部は消化器がん罹患率が南部のおよそ2倍、トマトの消費量は半分以下とされています。北部は牧畜の盛んな地域で乳製品が多く、南部はトマトやオリーブ栽培が盛んな地域で日常食としている伝統的地中海料理のメッカです。この食文化の差にも注目が集まっています。
                                            
(第1回 完)

posted by 高原裕一 at 11:50| サプリメント&健康食品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月06日

序 章 リコピンフォーラム(LYCOPENE FORUM)

序 章 リコピンフォーラム(LYCOPENE FORUM) 


リコピンのすべてを知る「リコピンフォーラム 〜リコピン 最新情報館」がまもなくオープンします。
このフォーラムは、フィトケミカル(植物化学成分)とよばれる野菜の栄養機能成分(カロテノイドやポリフェノール、ビタミン、ミネラルなど)について、世界的に研究が進んでいるリコピンはじめ、フィトケミカルの学術情報を中心に解説します。
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トマトやスイカ、カキ、ピンクグレープフルーツ、グァバなどの赤い色、この赤い色は「リコピン(LYCOPENE)」という
脂溶性(油脂に溶ける)のカロテノイド成分で、私たちの健康に役立つ栄養機能成分です。リコピンは毒性の強い紫外線が誘発する活性酸素(一重項酸素)を消去し、害虫を遠ざけて自己を守って実るという、光合成で生みだされる天然の機能成分す。そして、天然植物(野菜)でもっとも強い抗酸化活性(活性酸素の中和力・消去力=活性酸素との結合力)をもつのがリコピンです。リコピンやルティンなど野菜が生みだす防御機能成分、フィトケミカルは私たち人間のウエルネス(健康)を守る天然の恵み、健康成分なのです。
このフォーラムでは、リコピンをはじめとする野菜・果実の優れた防御機能成分(フィトケミカル)を紹介し、ウエルネス(健康)やダイエットに役立てるための最新の健康科学情報をお伝えしていきます。

野菜にとっても厳しい環境である夏。高温・高湿・強い紫外線が降り注ぐ厳しい夏の自然環境を生きぬいて実るトマトやスイカ。その生き抜くチカラが野菜のパワーです。リコピンスペシャリスト(認定)、高原裕一がわかりやすく解説します。
                       リコピンスペシャリスト(認定)  高原 裕一

posted by 高原裕一 at 14:41| サプリメント&健康食品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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