2015年10月09日

第41回 リコピンフォーラム「ノーベル賞」

第41回 「ノーベル賞」

1. 医学・生理学賞と化学賞
今年、東京・白金の北里研究所前所長の大村 智先生がノーベル医学・生理学賞を、千葉・柏市の東大宇宙線研究所所長の梶田隆章先生がノーベル物理学賞を授賞されました。特に、医療のフィールドで私もご面識ある大村先生の授賞は、先生の長年にわたる研究への取り組み、その成果が世界で見事に評価されたことを嬉しく思いました。江崎玲於奈先生(物理学賞)、故福井謙一先生(化学賞)、利根川 進先生(医学・生理学賞)、そして今回の大村 智先生と、ノーベル賞を授賞された先生方と私もこれまでにそれぞれ交流させていただきましたが、皆さまホットな人間的魅力、個性をお持ちの先生方です。
さて、大村先生の研究成果はアフリカを中心に2億人(10億人?)を失明の危機から救ったクスリ(イベルメクチン)ですが、既に数々紹介、報道がなされています。ここでは化学賞 『DNAの修復メカニズムの解明』 もとりあげたいと思います。
蛇足ですが、化学賞と医学・生理学賞の区分はよくわかりません。今回の化学賞は「がん、老化のメカニズム」に関係する研究成果です。私たちのカラダをつくる細胞は60兆とも100兆ともいわれ、日々数千万もの細胞が変異していて、それを日々修復しながら(一部は排除)再び活動しています。その変異細胞を修復する生体のメカニズムに関する研究が今回の化学賞です。これも医学・生理学賞では?と思ったわけです。ちなみに、大村先生の研究は天然物化学、有機合成化学といわれる分野です。臨床的、基礎的という区分があるかもしれません。化学賞も3名の研究者が授賞されています。

2. エバーメクチン
大村先生のエバーメクチンですが、伊豆のゴルフ場の土に棲んでる細菌(放線菌)がエバーメクチンの研究へ発展しています。この細菌がマクロライドという抗菌活性の強い代謝産物(大村先生はエバーメクチンと命名)を産生していたのです。現在、医薬品には多くのマクロライド系抗生物質があります。大村先生はメルク社との共同研究によってこのエバーメクチンが家畜・動物の寄生虫駆除に有効であるとわかり、動物薬として販売されました。その後、メルク社とともにエバーメクチンの改良を重ね、人が利用できるイベルメクチンが合成されました。このイベルメクチンがアフリカ諸国や中南米諸国の寄生虫感染を予防する薬として2億人以上の人に(特に子ども)利用され、失明を予防したのです。マクロライドを産生する微生物からそうしたクスリが開発されたことから、大村先生は「微生物のおかげ」と授賞の喜びを語っていらっしゃいます。
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3. DNAの修復メカニズム(化学賞)
DNAは遺伝子です。私たちは人間は60兆ともいわれる細胞の集合体ともいえますが、細胞の新陳代謝(細胞分裂)を司るのがDNAです。DNAは大変傷つきやすくて、太陽の紫外線、タバコや排気ガスの有害物質、生体内で発生する活性酸素などによって絶えず傷ついています。そして、傷ついて変異したDNAは修復され(あるいは排除され)ながら、私たちの生涯を形成しているわけです。
リンドール先生(英国・Fクリック研究所)は、酸化によって変異したDNA(CシトシンのUウラシル化)をチェックし、DNAの修復を修復する(排除する)メカニズム(DNAの塩基除去修復)を解明されました。がん、老化に関係します。
サンジャール先生(米国・ハワードヒューズ研究所)は、太陽の紫外線損傷によるDNA(チミン)をチェックし、連続したDNA(Tチミン)を修復する(除去する)メカニズム(DNAのヌクレオチド修復)を解明されました。特に皮膚がんに関係します。
モドリッチ先生(米国・ノースカロライナ大学)は、細胞分裂で転写される30億文字(塩基)では3万文字程度が間違って転写されるのをチェックし、修復する(除去する)メカニズム(DNAのミスマッチ修復)を解明されました。多くのがん発症に関係します。
これらの研究はいずれも1970〜80年代に成果が発表された研究です。

4. DNA修復メカニズムとがん、老化
3人の化学賞の研究成果は、がん、老化に大きく関わる研究です。この修復メカニズムが適正に機能していると、傷ついたり変異したDNAは日々修復され、また排除され、細胞分裂が正しく行われます。しかし、何らかの理由でメカニズムをすり抜けた変異DNAがあると身勝手な細胞分裂を行うようになります。それらが老化を促進したり、がんを発症させる細胞です。この修復メカニズムを狂わす大きな原因の一つは身近にあふれる活性酸素です。私たちの体内、体外にあふれる活性酸素対策は健康維持に極めて重要な要素だといえるでしょう。現代生活は紫外線(放射線)、電磁波(特に発熱電気機器)、タバコや排気ガス、食品の人工添加物質、クスリなど化学物質・・・実に多くの活性酸素誘発物に取り囲まれています。眼に見えない強力な細胞毒である活性酸素こそ、この修復メカニズムを狂わせ、病気を発症させる最大原因といってもいいのです。
ですから生活環境、食生活などを見直し、改善すべき点を見出すのがまず第一です。紫外線、タバコ、電化製品(発熱型電気器具;特にヘアドライヤーは活性酸素の誘発脅威)、添加物だらけの飲食物(ジャンクフード、コンビニフードは要警戒)、住環境(排気ガスの多い幹線沿いで生活する人)など、可能なことをまず改善する、そんな意識と行動が求められます。食生活では加工食品の摂取比率を低下させ、野菜を2倍に増やすようにしましょう。また、便利過ぎるほどの電化生活からまず何か一つ遠ざけましょう。
がんの発症や老化の進展はこのDNA修復メカニズムの機能低下に起因するといえるでしょう。そして、その大きな原因は過剰な活性酸素の誘発、便利過ぎる現代生活にある、そう考えていいと思います。「エコ生活」が話題になっていますが、エコ生活とは身の回りから活性酸素を減少させる生活といえるのです。
                                            (第41回 完)






posted by 高原裕一 at 15:32| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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