2014年11月11日

第36回 リコピンフォーラム「高血圧・脳卒中予防ガイドライン」

第36回 『高血圧・脳卒中予防ガイドライン

先頃、米国心臓協会(AHA)と米国脳卒中協会(ASA)のガイドライン(指針)が改定され、予防医学として地中海レシピが推奨されています。近年、海外はもとより日本でも地中海レシピの評価報告が相次いでいます。

1. 米国心臓協会(AHA)と米国脳卒中協会(ASA)のガイドライン(指針)
脳卒中は脳出血と脳梗塞の両者を包含する脳疾患イベントです。脳卒中は日本も米国も、がん・心臓病とともに3大死亡原因になっています。高血圧症・動脈硬化症・高コレステロール血症・肥満などを放置すると心臓病・脳疾患などのイベント発症につながるため、コントロール(予防・治療)が必要な病気です。高血圧症という病気は喫煙(タバコ)の生命リスクとほぼ同程度であり、脳卒中(脳梗塞・脳出血)リスクは高血圧症、高コレステロール血症とパラレルともいえますので十分な健康管理が必要です。今回、米国はAHAとASAが共同ガイドライン(予防・治療指針)を策定しガイドラインに予防医学として「地中海食、DASH食の推奨」が盛り込まれています。
米国は1980年代、がんや糖尿病など生活習慣病を「薬で治らない肉食中心の食原病」とし、食生活への警鐘、改善するためのデザイナーフーズ計画(DFP)を公表しました。がんの発症予防を目的に、一日5皿(350g)の野菜・果実の摂取運動(5 a Day運動)が全米で啓蒙されたわけです。その後、米国ではがん発症率が今日まで低下し続けています(日本は野菜の摂取量が低下し、がん発症率は上昇)。今回のガイドラインに盛り込まれた食生活における地中海レシピ、DASHレシピの推奨は心疾患・脳疾患イベントに関わる高血圧症、肥満症の予防を目的としています。日本でも食の欧米化、生活習慣病の増大が顕著ですので大いに参考にしなければなりません。

2. DASH食は日本食?! 野菜・果実を増やし、赤み肉・乳脂肪を減らす
DASH (=Dietary Approaches to Stop Hypertension)とは、高血圧を予防する食生活を意味する用語です。このDASH食は全米で1980年代に取り組んだデザイナーフーズ計画の発展ともいえ、伝統的肉食(動物脂肪)中心の食生活を改善することを推奨しているわけです。
DASH食のレシピとして 野菜・果実・豆類・魚介類・海藻類・全粒粉(パン)を増やす。肉類(牛・豚)・ソフトドリンク・ソーダ類・甘菓子を減らす」が骨子です。この背景には 「カラダによくないものを減らし、カラダにいいものを増やす」という考え方があります。高カロリー・高脂肪(肉食)を抑制(=低カロリー・低脂肪を推奨)し、ビタミンやカリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル類(無機質)とファイバー(食物繊維)の栄養機能成分とたんぱく質の高摂取を推奨しています。こうしてみるとDASH食は日本食(伝統的)との共通項が見えてきます。私たち日本人が日本食より米国発の代表的なジャンクフード(高カロリー・高脂肪・低栄養)であるハンバーガーに夢中のときに、米国では日本食のようなDASH食でヘルスケアに取り組んでいるのです。日本食が健康のために優れたレシピであることをこの機会に再確認したいものです。(写真2 DASH食ピラミッド)

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3. 飽和脂肪酸(動物油)と不飽和脂肪酸(植物油)
地中海食の研究報告はこれまでもご紹介してきました。地中海食・DASH食・日本食には共通することがあります。それは「肉料理、あるいは乳製品がメインディッシュではない」ことです。動物油の飽和脂肪酸を摂らないレシピであることが共通しています。肉(牛・豚)や乳製品(バター・チーズ)に含まれる動物脂肪は飽和脂肪酸(融点が高く、常温で固型)であり、LDLC(いわゆる悪玉コレステロール)を増産し、アテローム性動脈硬化を促進しますホルモンや細胞壁などの形成にコレステロールが必要なのですが、過剰摂取は問題になります。脂質は概ね20%〜25%以下とし、必須脂肪酸n3系(αリノレン酸/EPA/DHA)やn6系(リノール酸/アラキドン酸)など、融点が低く、常温で液体の不飽和脂肪酸を中心に摂るようにしましょう。また、飽和脂肪酸(動物脂肪)は総脂肪酸の30%以下となるよう、バランスをよく考えることです。
また、オリーブ油は融点が低い(マイナス5〜10℃)不飽和脂肪酸、オレイン酸(70〜80%)です。植物油(不飽和脂肪酸)は酸化しやすいのですが、オリーブ油(オレイン酸)は極めて酸化しにくいのです。また、n6系リノール酸がHDLCの合成を抑制することが明らかとなり、その摂り過ぎに注意喚起されました。変わってオリーブ油(オレイン酸)に注目が高まってきていますが、オレイン酸(オリーブ油)は「HDLCを増加させ、LDLCを抑制する」ことがわかっています。
動物脂肪(飽和脂肪酸)は健康上もっとも警戒するべき油脂成分ですが、「植物油」でもヤシ油・パーム油はほとんど飽和脂肪酸ですから、動物油脂に近い(融点が高い、常温で固形)ことは知っておきたいことですパーム油を食品・健康食品・サプリメントの原料にした製品も多く、注意が必要です。パーム油は工業油脂、洗剤、界面活性剤で多用されており、食品原料としてあまり好ましいとはいえません原料表示に「植物油」と記載された製品(サプリやスナック菓子など)のほとんどがパーム油と考えられます。植物油でありながら動物油と同等(飽和脂肪酸)ですから、他の植物油(不飽和脂肪酸)とは根本的に異なっています。由来植物を明記せず植物油とだけ記載していることが消費者に誤解を与え、混乱させているとも思われます。オリーブ油・サフラワー油・ゴマ油・大豆油・米糠油など、由来植物が記載された製品を選ぶのが安心でしょう。

4. 地中海食と日本食、DASH食
地中海食は健康維持のさまざまな観点から高い評価を得ています。食物の栄養は、炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質をビタミン・ミネラル・繊維質などの機能成分と酸素で生命エネルギーを合成していることはこれまでお話しました。そして、高血圧・心臓病や脳卒中の予防のためのガイドラインに地中海食が具体的に盛り込まれたことは大変大きな意味をもっています。
地中海レシピはトマト・オリーブ油をベースに、野菜・魚介・鶏肉・豆類などを混載して煮込むのが基本です。地中海沿岸やメキシコ、南米などでは日常の家庭料理です。このレシピはトマトとオリーブオイルがベース(出汁)になっているわけです。世界的にみると、日本のようにトマトをそのまま生食するのは稀で、ほとんどがレシピのベースで使われます。トマトにカロテノイド成分が多く含まれる(リコピン・ルティンほか)ことを古くから知りオリーブオイルで溶かす調理法が発展したものと思われます。トマトの生食、トマトジュースからは、リコピンなど脂溶性カロテノイド成分は吸収できません(水溶性ビタミンは吸収できます)。地中海食では牛・豚など赤み肉、バター・チーズなどの乳製品がありませんから地中海食に動物由来の飽和脂肪酸はない(鶏肉など白身肉はあり)のです。

さて、日常食として魚介を世界で最も食しているのは日本です。近年は日本のお鮨が欧米にも拡大していて、今やお鮨の本籍はどこの国か?!と思うほど、海外ではお鮨(日本食)が圧倒的な人気です。日本は歴史的に魚介をタンパク質の主な摂取源としてきており、牛・豚肉は戦後の食物です。また、かつてはクジラ肉もあり、イナゴ・バッタや蜂の子、さらにスズメやどじょう、ヘビなどの肉もタンパク源になっていたのです。現在も、京都・伏見稲荷神社の境内にはすずめの焼き鳥店があり、宇治で補獲されたスズメの肉を食すことができます。どうじょうは柳川鍋、イナゴ・バッタ、蜂の子などは佃煮があり、地域によっては馬肉もあります。
どうあれ、日本は日常的に赤み肉(牛・豚)をほとんど食してこなかったといえます。戦後、牛肉・豚肉の輸入量がジェットコースターのようにうなぎ昇りに拡大してきました。今では牛・豚肉から高栄養・高エネルギーを摂ることができ、タンパク質不足は解消、栄養不足が原因の病気はほぼなくなり、身長、体重、寿命は戦後一貫して伸び続け、かえって動物性脂肪の高摂取が健康上の問題になっています。ハンバーガー店、焼き肉店はどこの街角でも目にする光景になっているほどです。その一方、味噌汁、煮物、煮魚、焼魚、納豆、漬物など・・・日本の伝統レシピは牛ステーキなど肉料理との間で、陳腐でありふれた食事かのような錯覚を覚えがちなのは私だけでしょうか?。元経団連会長の土光さんは、はんと味噌汁、あとはメザシと漬物(梅干し)があればいいと書かれています。なるほど・・・と思うわけです。何事も「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」です。

5. 動物肉・乳脂肪(飽和脂肪酸)は控えめに!
米国では1980年代のデザイナーフーズ計画も、今回のガイドライン策定に盛り込まれたDASH食に関連しても、膨大な健康人(がん、心臓病・肥満・脳疾患に罹患していない人)の食生活を長年(10〜20年)調査しています。端的に言えば、がんを発症した人や心臓病・脳疾患を発症した人は野菜の摂取量が少なく、動物脂肪(赤み肉)の摂取量が多いと言えます。逆に言えば、そうしたイベントを発症しない人は野菜をしっかり摂っている、動物脂肪(赤み肉)・乳脂肪は控えめにしているということなのです。これが200万〜300万人の母集団調査ですので説得力に富んだ研究になっています。その結果、地中海食やDASH食が高血圧症・動脈硬化症・肥満症・心臓・脳疾患イベントの予防で推奨されたというわけです。日本の一人当たりの赤み肉消費量は米国の約2分の1ですが、脂質のバランスは考えなければなりません。既に、米国人の誰もが日本人より動物脂肪・乳脂肪の摂取量が高いわけではなく、ベジタリアンは多数います。TVに映る米国の政治家や企業リーダーに肥満者がいないことにはお気づきでしょうか。動物性脂肪(飽和脂肪酸)の過剰摂取は大腸ガンとの関連性も強く指摘されています。過剰摂取は要注意といえるでしょう。
*参考  一人あたりの赤み肉(牛・豚)の年間摂取量(2011年)
      日本      牛肉11Kg  豚肉20Kg   合計31Kg  男女平均寿命84歳(世界TOP)
      米国       牛肉37Kg  豚肉27Kg   合計64Kg   男女平均寿命79歳
      (2014報告 牛肉24Kg
             中国        牛肉 4Kg    豚肉38Kg   合計42Kg   男女平均寿命75歳
      韓国       牛肉13Kg    豚肉28Kg   合計41Kg   男女平均寿命81歳
      アルゼンチン 牛肉53Kg   豚肉 4Kg   合計57Kg    男女平均寿命76歳
      香港      牛肉23Kg   豚肉67Kg   合計90Kg     (不明) 

過剰な動物脂肪・乳脂肪はLDLCを増加させ、HDLCを破壊し、動脈硬化を促進させる、エネルギー代謝率(変換率)が低いなど・・・健康維持のために飽和脂肪酸(動物脂肪・乳脂肪)の過剰摂取に十分な注意が必要です。飽和脂肪酸(動物脂肪・乳脂肪)、多価不飽和脂肪酸(n6系植物油リノール酸・n3系植物油αリノレン酸魚油EPA・DHA)、一価不飽和脂肪酸(n9系オリーブ油・ナッツ類)をバランスよく摂る、それが心臓・脳疾患イベントの予防につながる大切な視点です。
なお、米国ではデザイナーフーズ計画の国民運動以来、赤み肉の消費が年々減少し(牛肉消費量 1976年43Kg ⇒ 2014年24Kg)、近年はDASH食推奨もあり、動物油脂(脂肪)の摂取量はさらに減少しています。(鶏肉などの白み肉は拡大)
                                             (第36回 完)




posted by 高原裕一 at 19:17| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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