2016年01月06日

第42回リコピンフォーラム「未病-健康と病気のあいだ」

第42回 『未病 −健康と病気のあいだ』

1. 神奈川県-未病プロジェクト
「未病」-みびょう-という言葉−医学用語をご存じの方も多いと思います。神奈川県は健康寿命延伸プロジェクトとして、未病の克服-予防医学-を推進しています。行政の健康増進プロジェクトとして「未病」を据えているのです。大手企業時代、私は医師へのメッセージで「個の医療」というキーワードを情報発信しましたが、現在では個別化医療またパーソナルメディスン、ゲノム医療など、さまざま類語が日常使われる時代になってきています。
「個の医療」、「未病」という言葉は、東洋医学の根幹にある大切な考え方をあらわす医学用語です。東洋医学的な診断を診療(治療)に採り入れる医師(薬剤師)が増えたのはいいのですが、東洋医学の根幹を学ばず、漢方薬を西洋薬(合成新薬)と同様に考えてしまう医師がまだまだ多いというのが現状です。「個の医療」や「未病」の言葉であらわされる東洋医学の根幹を学ぶ−それが東洋医学を診療に役立てるために必要なのです。その意味で、神奈川県が進める今後の未病克服プロジェクトには大いに期待しているわけです。

2. 病気とは何か、どうとらえるか
病気は−高血圧、腰痛、心臓など・・・臓器の働き、機能低下した状態と考えることができます。外的要因のインフルエンザなど、感染症もやはり生体防御機能の低下が背景にあります。前回、ノーベル化学賞のDNA損傷・変異の修復・排除メカニズムの研究について話しましたが、これも生体機能の低下です。このように、健康は生体機能が保たれている状態ということができ、病気は機能が低下した状態と考えることができるでしょう。
西洋医学は検査医学です。検査値のある地点で病気を宣言します。すなわち、検査値で線引きし、健康人か病人かのいずれかに2分する考え方です。例えば、高血圧症は85-130mmHgを正常値血圧と決め、89-139mmHgまでを高血圧症前段階、90-140mmHg以上を高血圧症(日本高血圧学会)と決めています。ところが、このような検査値だけを基準にすると、治療によって不健康になる人もいるわけです(医原病)。年代を問わず個体差はありますが、特に高齢者では個体差が大きく、検査値だけをもとに治療する西洋医学では十分な治療ができません。ですから、東洋医学(特に漢方薬)を採り入れる医師がどんどん増えているわけです。東洋医学では病気と健康を検査値で2分せず、個人ごとのそれぞれの病態の段階を注視します。
そして、この個体差は患者さんと医師のコミュニケーションによってわかるわけです。これは「問診」とよばれる診察ですが、特に東洋医学がもっとも重視している診察です。検査値にあらわれない症状、日常生活の点検によってその人の個性(個体差)がわかることが多いためです。近年はストレス医学(心療内科)という分野があり、同様に問診を重視します。問診は個体差があることを前提にし、各人の症状(個体差)の把握に力点を注ぎ、同時に未病を把握することが目的です。ですから、この問診は検査値に未だあらわれない症状-未病-を把握するために重要な診察です。およそ、3分診療で把握することはできません。まさに「個の医療」の実践、すなわち個体差がある(大きい)ことを前提とした診察、治療といえます。

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3. 未病を治す
未病を治す−検査値にあらわれないさまざまな症状を把握し、検査値で異常となる前に(病気になる前に)、自らあるいは医師と共同で予防医学に取り組む考え方です。通常、検査値は正常(健康)の範囲内にあり、西洋医学では病気と判断しません。いわば健康人です。一方、東洋医学は未病」という病気として診断することがあります。
東洋医学はなぜ未病という概念で健康と病気をとらえようとしているのでしょうか。東洋医学は検査値だけで健康と病気を2分する診断をしません。個人差があることは初めから前提ですから、検査値が同じでも、ある人は病気、ある人は病気といえないと診断することがあります。そして、「健康と病気は個体差をもったそれぞれ個人の段階的違い」と見ます。ですから、最高血圧が140mmHg以上でも病気といえない人がいるわけです。こうした診断は極めて現実医療に近いといえるでしょう。
また、東洋医学では同じ病気の治療も各人でクスリ(漢方薬)が異なる(同病異治)、各人の病気が異なっても同じクスリで治療する(異病同治)ことも普通のことです個体差を重視する東洋医学は、検査値だけで診断せず、また治療するクスリは(漢方薬でも合成新薬でも)一律でなく、各人の必要な薬を選択することにつながります。これは個の医療が、あくまで「その人が」病気かどうかが問題だからです。
検査値医学、すなわち西洋近代医学は「一律に病気を判定する」有力な診断法ですが、検査値を見なければ病気かどうかわからない・・・西洋医学の考え方はどこか医者助けのように思えます。医師と患者のコミュニケーションが現実医療でもっと重視されて然るべきでしょう
強い冷え症、習慣性の頭痛やめまい、不眠などは東洋医学的に未病と診断されることが多い代表症状ですが、こうした症状でも人によって(個体差)異なることが当然あります。未病の診察はやがて病気につながるであろう前段階症状を把握することですから、早めに予防医学に取り組むことができるわけです。予防医学は多くの場合、生活習慣の改善、食生活の改善が基本となります。特に、日常生活では運動習慣、また、食生活では添加物に注意する必要があるといえます。実際にも、そうした意識改善で相当な未病が改善されていきます。
                                              (第42回 完)





posted by 高原裕一 at 20:16| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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