2014年12月11日

第37回 リコピンフォーラム「世界文化遺産としての和食」

第37回 『世界文化遺産としての和食』

先頃、日本の伝統和紙文化がユネスコ無形文化遺産として登録されたことをご存じと思いますが、日本の 「和食(日本食)」が  「地中海食文化」 「メキシコ食文化」とともにユネスコ無形文化遺産に登録されていることはご存じでしょうか。伝統だけではありません。なぜ、日本の和食が文化遺産とされたのか。「日本食と健康」について考えたいと思います。
*登録は他にも、フランス食レシピ(食美術)、トルコ食レシピ(麦粥ケシケキ)、韓国食レシピ(キムチ)などがあります。

1. 和食(WASHOKU;日本伝統食)
日本食とその食文化が無形文化遺産となり、国際的に守られるべき食文化とされました。日本食(和食)はお肉がメインディッシュではなく、野菜(山)と魚介(海)がメインディッシュになっているレシピです。 

@新鮮、多様な山・海の産物を食材にしていること。材の持ち味を引き出し、引き立てる工夫がされていること。 
Aお米、味噌汁、魚介、野菜・山菜などがバランスよく構成されていること。動物油脂を多用せず、長寿や肥満防止に寄与すること。 
B料理に葉や花などをあしらい、美的に盛りつける表現が発達したこと。季節にあう食器や部屋のしつらえがなされること。 
Cお正月などの年中行事と関わる食事の時間を共有し、家族、地域の絆を強化してきたこと。
以上、「自然を尊重する日本人の精神を体現した食の社会的慣習」であるとされ、ユネスコ無形文化遺産に登録されたわけです。

特に、お鮨は今や世界食になりつつあるわけですが、和食は動物脂肪・油脂(赤み肉)をほとんど使わないのが大きな特徴であり、地中海食とならぶ世界でもっともヘルシーな食事・食文化といってもいいでしょう。そして、米国の心臓病学会・脳卒中学会が予防ガイドラインで推奨するDASH食ですが、それはこの日本食(和食)に近似するといえそうです。

2. DASH食(米国)
DASH食というのは Dietary Approaches Stop Hypertension の略で、「高血圧予防食」です。 高血圧は心臓病や脳卒中(脳出血・脳梗塞)イベントの発症に結びつきやすいため生活習慣の改善が求められます。まず第一に食生活の改善です。米国では、長年の調査から高血圧、心臓・脳疾患イベントを発症した人は動物脂肪(動物油脂)の過剰摂取が顕著であるためガイドラインは心臓病学会と脳卒中学会が共同で動物脂肪の摂り過ぎに警鐘を鳴らしたということです。
前回、一人あたりの各国の赤み肉摂取量を報告しましたが、米国ではこうした運動もあって赤み肉の摂取量が毎年低下し続けており、今では30年前のほぼ半分24Kg(牛肉)になり、さらに減少が続いています。
1980年代のデザイナーフーズ計画、近年のDASH食の取り組みで米国人の食生活は動物油脂の過剰摂取が改善されてきていて、野菜、魚介、木の実、穀類、海藻、白み肉(鳥肉)などが増えています。一方、日本でも動物脂肪の摂り過ぎが問題になりつつあります。動物油脂はカロリーが高く、エネルギー過剰になりがちです。例えば、一日500Kcalしか消費しない人が2500Kcal摂れば、基礎代謝(男性1400〜1500Kcal/女性1200〜1300Kcal)を考えてもエネルギー過剰(500Kcal過剰)になります。それが何年も継続くならどうなるでしょう。肥満、糖代謝異常(糖尿病)、高血圧など、エネルギー過剰から引き起こされる病気は多彩です。お肉(特に赤み肉)を多食する人はエネルギーをいとも簡単に摂ってしまいがちです。野菜は繊維質(ファイバー)が多く、それが水分で膨らんで消化に時間がかかり、満腹感をもたらします。お肉はすぐに消化されてしまい、食べ過ぎになりがちなことは心得ておく必要があるでしょう。お肉の方が圧倒的にエネルギー量は高く、簡単にエネルギーを得る(動物脂肪に偏った栄養)ことができるのです。40歳過ぎたらエネルギー総量を減らしましょう。甘み系のお菓子、ジュースなども減らした方がいいでしょう。健康のためにも文化遺産である和食に回帰しましょう。現在の米国ではDASH食などで食生活の改善運動が活発になっています。
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3. 地中海食(ギリシャ・イタリア・スペイン・モロッコ)
地中海エリアは心臓・血管系の病気やがん発症率が低いことが注目されています。オリーブ油やトマトが日常食というこのエリアの食事は世界一の健康食ともいわれ、医学的に注目が高まっています。成人病予防に最も役立つレシピと言っていいのかも知れません。日本でもトマト鍋は流行しているようですが。
まず第一にトマトとオリーブ油がベース(出汁)のレシピであり、トマトはうまみ成分であるグルタミン酸をたっぷり含んいます。そこに穀類・芋類や野菜・豆類・山菜・木の実・海藻・魚介・鶏肉(白み肉)を混載したのが地中海レシピです。赤み肉(牛・豚)と乳製品はほとんど用いず、魚介をたっぷり使います。また、ポリフェノールが豊富な赤ワインがプラスされたりもします。
地中海沿岸の国は他の国より心・血管系疾患(冠状動脈疾患)が少ないことが「7カ国共同研究」で明らかになり、糖尿病の発症リスクを40%低下させたことも明らかにされました。これに関連し、オリーブオイルの高摂取(摂取エネルギーの30%以上)が注目されます。それは油脂のほとんどはカロリーの高いオリーブオイルですが、高摂取にも関らず肥満や心臓病、がんなどが少ないからです。
*7カ国共同研究・・・日本・アメリカ・オランダ・フィンランドイタリア・ユーゴ・ギリシャ

地中海食とDASH食の共通項が見えてきました。DASH食のレシピは地中海食や和食とほぼ同様と言っていいでしょう。その共通項は「赤み肉(牛・豚)や乳製品をほとんど摂らない」ということです。近年、米国では赤み肉の摂取量が激減しており、ハンバーガーが売れなくなっています。米国心臓病学会と脳卒中学会が高血圧・脳卒中イベント予防のための共同ステートメントを出しましたが、その背景は赤み肉や乳製品の「高摂取」は高血圧・肥満・糖尿病を誘引し、心臓・脳血管系のイベントリスクを高めるためです。
トマトとオリーブオイル、地中海沿岸エリアの一人あたりトマト摂取量は日本のおよそ5倍~10倍。ですから、いかにトマトが日常食かはお分かりいただけると思います。日本食との違いにはトマトとオリーブオイルの摂取量の違いがあり、共通項は動物脂肪(油脂)、乳脂肪をほとんど摂らないことです。日本食が高品質油脂のオリーブオイルをうまく利用できればさらに豊かな食生活になりそうです。アメリカが経験している健康と食生活の課題は日本にも当てはまります。私たちは日本食が地中海食と並んで大変優れた健康食であることを再確認したいものです。

                                  (第37回 完)


posted by 高原裕一 at 20:18| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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