2014年04月15日

第31回 リコピンフォーラム 「フィトケミカル−生体防御機能成分」

第31回 『 フィトケミカル−生体防御機能成分 』

野菜に含まれる栄養機能成分であるリコピンなど、カロテノイド成分やポリフェノール成分は近年その働きがわかった機能成分です。この機能成分はフィトケミカルとよばれ、食物繊維(ファイバー)に続く第7栄養素といわれるようになりました。少し前までは、食物繊維(ファイバー)が人には消化できない不要物、カロテノイドやポリフェノールはただの色とされていたわけですが、ファイバーは機能をもつ栄養素(炭水化物)、カロテノイドやポリフェノールは生体防御機能成分とされ、いずれも私たちの健康維持や病気の予防に重要な働きをしていることがわかってきました。

1. フィトケミカル
この野菜の機能成分であるフィトケミカルは野菜や果実が自ら生みだしている成分ですが、土のなかのミネラル(無機質)や水、太陽光(光合成)を利用して生みだす天然の生体防御機能成分です。フィトケミカル(Phyto-chemical)は、フィト=植物(ギリシャ語)+ケミカル=化学成分です(ファイトケミカルともよびます)。リコピンやルテインなど、カロテノイド成分は脂溶性(油脂で分解される成分)で、アントシアニンやイソフラボン、カテキンなど、ポリフェノール成分は水溶性(水で分解される成分)です。いずれも野菜や果実(植物)の色になり、私たちの日々の生活や風景にも彩りを与えています。
古代ギリシャ時代にヒポクラテスという医師が柳の葉をカゼの治療に使いました。現在は、その成分からよく知られるアスピリン(解熱鎮痛薬)という薬が開発されています。また、タキソール(抗ガン薬)はイチイの成分、キノコ類でもレンチナン(抗ガン薬)はシイタケから開発されました。植物(野菜や果実)は自然の脅威や害虫から自らを守るための防御機能成分をつくり、無事育って、実るというわけです。その防御機能は活性酸素を消去する抗酸化力が中心です私たちの体でも常に活性酸素が生まれ、体内でも消去酵素(SODやグルタチオンなど)が働いています。しかし、活性酸素が過剰な現代、体内の酵素だけでは消去できません。そのとき、ビタミンCやE、還元型コエンザイムQ10、そしてフィトケミカルがあると、活性酸素と結合し、活性酸素を消去しますフィトケミカルは私たちの体でも機能を発揮していることがわかり、第7栄養素として注目されています。ここでは、野菜のフィトケミカル、カロテノイド、ポリフェノール、有機硫黄化合物、多糖類をご紹介します。

2. カロテノイド成分
カロテノイドではα‐カロテンやβ‐カロテンがよく知られていますが、リコピン(トマト・スイカ・グァバ)やルテイン(ホウレンソウ・ブロッコリー・キャベツ・トマト)、β‐クリプトキサンチン(みかん・オレンジ) などが知られるようになったのは近年です。強力な抗酸化力(活性酸素の消去力)があり、日常野菜や果実から誰でも摂ることができます。病気の発症に活性酸素が関与していることがわかり、抗酸化力の強い野菜や果実に注目が高まっています。カロテノイドは脂溶性ですから油(脂肪酸)で調理すると吸収が高まります。また、水に溶けませんのでトマトジュースを飲んでもカロテノイド成分を吸収することはできません。また、カロテノイドの多い野菜は脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E)も多く含み、相乗的にカロテノイドの活性を高めています。
諏訪中央病院の鎌田 實先生は、動脈硬化の予防には野菜のカロテノイド成分を意識して摂ることが大切であると仰っています。リコピンなどカロテノイド成分は野菜がつくる薬にもっとも近い天然の生体防御機能成分といっていいのです。

リコピンの抗酸化力は食品成分ではもっとも強く、ビタミンEの103倍と報告されています。それが日常食品のトマトに含まれていますので、油脂(オリーブオイル)とともにトマトを毎日食べたいものです。トマトとオリーブオイルをベースに野菜と魚介類で立派な地中海料理ができあがります。もちろん、パスタでも同様です。リコピンの強力な抗酸化機能は、特に紫外線による皮膚の酸化予防(日焼け予防)、脂質代謝の促進、LDLコレステロールの酸化予防(酸化LDL化の予防)があります。血管は血液と酸素を運んでいますので活性酸素の脅威に絶えずさらされており、血液に溶けた脂質(コレステロール)は酸化しやすいわけです。LDLが酸化すると酸化LDLC(コレステロール)になり、血管壁を傷つけたり、動脈硬化や血栓を造成し、粘度の高いドロドロの血液をつくります。リコピンはLDLが酸化されないよう自ら活性酸素と結びつき、血液をサラサラに保つように働くフィトケミカルです。
また、ルテイン(ゼアキサンチンという異性体も)は眼の水晶体や黄斑部に多くが集まるカロテノイド成分です。テレビ、パソコンなどが発光する青光色は眼を疲労(酸化)させるのですが、ルテインはそれをブロックして眼を守ります。これもルテインの強い抗酸化機能の働きです。
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3. ポリフェノール成分
水溶性成分(水に溶ける)のポリフェノールはカロテノイドと異なり、水やジュースで摂ることができる機能成分です。水に溶けるため、コンビニなどにはポリフェノールを含む野菜や果実のジュースがいろいろあります。ポリフェノールがビタミンBやCなどの水溶性ビタミンと働くことも、カロテノイドがビタミンAやD、Eなど脂溶性ビタミンと働くことと異なっています。
ポリフェノールの多くはフラボノイドという色素です。ジュースに含まれるポリフェノールのほとんどがこのフラボノイド成分です。ブドウやブルーベリーのアントシアニン、大豆のイソフラボン、緑茶のカテキン、タマネギやリンゴのケルセチンなどが代表的です。フラボノイドにも抗酸化機能があり、活性酸素を消去することがわかっています。ただ、カロテノイドほど強力ではありません。体でもっとも多く誘発されている比較的軽度の活性酸素を消去し、水素と酸素に分解します。ただ、ポリフェノールは悪性度の高い紫外線が誘発する一重項酸素を消去することはできません。これにはカロテノイドの強力な抗酸化機能が必要です。また、大豆イソフラボンは女性ホルモン類似のポリフェノールで、ホルモン様の働きがあることがわかっています。他に、セサミノール(ゴマ)、クルクミン(ウコン)、クロロゲン酸(コーヒー豆・ゴボウ)、カカオ(カカオな豆)など、やはり抗酸化力をもつ防御機能成分です。
ただ、ポリフェノールは水溶性のため、ビタミンBやCと同じように3時間程度しか体内にはなく、熱に弱く、すぐに消失してしまいます。ですから、ポリフェノール成分は一日に何度か摂る必要があることは覚えておいてください。脂溶性成分のビタミンAやD・Eやカロテノイドは熱に強く、体内の滞留時間も長く、一日1回摂ればいいでしょう。

4. 有機硫黄(ゆうきいおう)化合物
有機硫黄といえばクルマの排気ガスを思い起こす人も多いでしょう。確かに、化石燃料(石炭・原油など)が燃えるときや化学合成品(化学繊維・医薬品)ができるときに生成します。PM2.5でも有名になりました。ところが、栄養素である炭水化物に硫黄成分が含まれていて、植物(野菜)が成長するとき、この有機硫黄化合物を生みだします。これは植物が成長するときの老廃物といわれますが、それが私たちの健康に役立つ機能成分です。これは酸素(動物に必要)と二酸化炭素(植物に必要)のように、動物と植物の助け合いと考えることができるでしょう。
さて、植物(野菜・果実)が生みだす有機硫黄化合物の代表はニンニクの異臭(刺激臭)である、アリシンという機能成分です。1980年代に米国・国立がん研究所(NCI)は、がん予防を目的に『デザイナー・フーズ計画』を発表しました。そこで、がんを予防するためにもっとも摂るべき野菜とされたのがニンニクです(上記写真;デザイナー・フーズピラミッド)。アリシンは抗酸化力が強く、血管内の活性酸素生成を予防し、血液をサラサラにする働きがあります。このアリシンはネギ、タマネギ(ユリ科植物)にも含まれています。カロテノイドと同じように油脂(脂肪酸)と相性がよく、油に溶けてアホエンという成分に変わると、さらに血液サラサラに効果的なことも覚えておきたいことです。
有機硫黄化合物はアリシンのほか、スルフォラファン(イソチオシアネート)という成分もあります。ブロッコリーやスプラウトに多く含まれ、抗酸化機能と解毒機能をもった成分です。特に肝臓では異物やがん誘発物の解毒を促進し、肝臓を保護する働きがあります。スルフォラファンはブロッコリーやキャベツなど、アブラナ科野菜に多く含まれる防御機能成分です。

5. 多糖類(炭水化物)
多糖は連なった糖質(炭水化物)です。デンプン・グリコーゲン・セルロース・ペクチンなどです。糖が10個以下の糖質はオリゴ糖とよばれますが、それ以上は人に消化・吸収できません。私たちの生命活動エネルギーの60%は糖質(炭水化物)を酸素で焼やして(酸化されて)つくられていますただ、エネルギーになるのは単糖(ブドウ糖)やニ糖(果糖)、三糖(砂糖)などのオリゴ糖類です。それほかの多糖類はファイバーとして働くものが多くなっています。甘みもほとんんどありません
多くが機能成分である多糖類の代表はデンプン(デキストリン)やセルロースなど、食物繊維(ファイバー)です。人(動物)はこのファイバーを消化する酵素をもちませんので、ファイバーは長い間不要物とされていました。しかし、今では健康維持に必要な機能成分(栄養素=炭水化物)とされています。ファイバーでもデンプン類の難消化性デキストリンなどは胃の水分を吸収(水溶性ファイバー)して膨張し、ブドウ糖(単糖)や脂質の吸収を遅らせるなど、血糖値の急激な上昇を抑えます。また、毒性のある成分を吸着して排泄したり、便通を整える(不溶性ファイバー)などもあり、ファイバーは健康維持、病気の予防に必要な栄養素とされています。このファイバー(食物繊維)の摂取不足が国民健康調査(厚労省)でも指摘されています。一日の必要量は19g(男性)・17g(女性)です。
また、アガリスク、メシマコブ、シイタケなどキノコ類にはβ-グルカン(1・3グルカン)という多糖が含まれています。やはり、糖が多重結合したファイバーで人は消化できない機能成分です。パン酵母・ビール酵母・オオムギ由来のβ-グルカンは免疫機能を増強すると言われたりしますが、検証されている研究データは見当たりません。やはりファイバーとしてその機能を活かすのがいいでしょう。
食物繊維(ファイバー)は海藻類や豆類のほか、野菜ではゴボウ・モロヘイヤ・オクラ・カボチャ・ニンジン・サツマイモ・ジャガイモなど、日常野菜に多く含まれています。また、果実でもリンゴ・イチゴにはペクチンという水溶性ファイバーが多く含まれます。ファイバーは胃の水分を吸収して10倍以上に膨らむのですが、ファイバーの機能を役立てるためにダイエットだけでなく、食生活で野菜・海藻類・豆類からまず先に食べるという習慣をもつことが健康維持に大切なのです。
                                        (第31回 完)



posted by 高原裕一 at 20:21| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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