第44回『健康診断という医療』
1. 健康基準値は誰が決めたのか
先日、定期健康診断を受診しました。健康診断では「その医療機関で定める健康基準値」を基に、健康か異常(病気)かを医師が判定するのが基本ですが、A医療機関で異常と判定された人が、B医療機関で異常なしと判定されるという問題もあります。このフォーラムでもお伝えしてきたように、西洋医学というのは検査医学ですから、検査値を基準に健康と病気を2分する考え方をします。ですから、検査しないと病気かどうかがわからない医学で、個体差(個人差)を考えない医学です。さらに、健康診断という医療には客観的統一基準値はありません。健診機関(医師)がそれぞれ定める基準値を基に、異常かどうかを判定しているわけです。そのため、A医療機関で異常(病気)と判定しても、B医療機関で健康と判定することがあるのです。この基準値は医療機関(医師)で自由に定めることができるため(恣意的ではなく、医学界で論争状態にある基準値のいずれに従うか)、判定が異なることがあるわけです。この事実をどう考えるべきか、自分の健康を守るために重要な問題になっています。これは、セカンド・オピニオン(複数医師の判定)の必要性、その重要性と同様の問題だといえるでしょう。
2. 拡大する健診医療ビジネス
さて、ここ10年、健診医療ビジネスに参入する医療機関(健診を主にする医療機関)が拡大しています。「医療費抑制」「予防医学」がKeywodsとなって、健診が儲かる医療ビジネスになったのです。もちろん、先日、国民医療費が過去最高の40兆円を超えた報告され、医療費は抑制できていません。医療機関はいつも医療行政の変化を読み、儲かる医療に重点を移し、収益の確保・拡大に動いています。医療費の高騰?など考えないのです。まさに医療もビジネスです。20年前、急性期型医療と慢性期型医療のスキーム改革があり、慢性期医療(長期入院型医療)が儲かる医療ビジネスとして急拡大しました。しかし、介護保険の発足による医療と福祉(介護)の峻別が求められ、10年も経たぬ間に長期入院型医療から撤退する医療機関が増えたのです。ただ、儲かる医療ビジネスではなくなったのです。経営の重点を急性期型医療から長期入院型医療に移した病院はこの変遷についていけずに倒産したり、M&Aされたり、多くの医療機関から医療行政への不満が高まりました。その後、登場したのが健診医療です。健診はヒマな医療機関が行う経営の穴埋め医療とさえ言われていましたが、現在では丸の内や八重洲、新宿、渋谷といったビジネス街、繁華街に健診クリニックが開設されているように、健診医療は儲かる医療ビジネスに変貌を遂げています。
この健診医療ビジネスの大義はいわゆる「予防医学」です。医療行政による予防医学のアナウンス効果で、これまで見向きもしなかった医療機関でもこの健診医療に参入するほど、儲かる医療ビジネスに変わっています。ただ、健診も医療ですから、この医療ビジネスを行う医療機関には相当の社会的責任がありますが、上記の問題が放置されているわけです。
3. 健診は予防医学たりえるか
人を雇用する企業は従業員の健康管理責任があり、健康診断(年1回Or2回)が義務付けられます。一方で医療行政、自治体はメタボリック健診、健康日本21運動、健康寿命を延ばそう運動など、医療費抑制、予防医学のアナウンスを強化し、企業や自治体は年1回の定期健診を推奨しています。しかし、医師であってもこの健診を受診しない(信頼しない)人は案外多いのです。私が親しい権威ある大病院のA院長(元有名大学教授・60歳代後半)は「自分は2年健診を受けてないが、市民セミナーでは年に1回受診しましょうと話すよ・・・」と笑っておしゃっていました。日本の年1回受診率は50〜60%で世界一ですが、逆にいえば半分程度です。それでも多くの先進諸国はこれほど健診は受診しません(15〜20%)。日本は世界に冠たる健診受診国なのです。
人を雇用する企業は従業員の健康管理責任があり、健康診断(年1回Or2回)が義務付けられます。一方で医療行政、自治体はメタボリック健診、健康日本21運動、健康寿命を延ばそう運動など、医療費抑制、予防医学のアナウンスを強化し、企業や自治体は年1回の定期健診を推奨しています。しかし、医師であってもこの健診を受診しない(信頼しない)人は案外多いのです。私が親しい権威ある大病院のA院長(元有名大学教授・60歳代後半)は「自分は2年健診を受けてないが、市民セミナーでは年に1回受診しましょうと話すよ・・・」と笑っておしゃっていました。日本の年1回受診率は50〜60%で世界一ですが、逆にいえば半分程度です。それでも多くの先進諸国はこれほど健診は受診しません(15〜20%)。日本は世界に冠たる健診受診国なのです。
健診は予防医学に貢献できるかですが、YesでありNoであるというのが有名大学B教授の見解です。例えば、つい先日毎年健診を受診していた同僚が肺がん末期(ステージW)と診断されました。がんではこうした事例が多いのです。また、X線検査は、米国でX線検査の放射線被ばくが問題とされ、X線検査を2年に1回とするガイドラインが出されました。CT検査(マンモグラフィも)やPET検査も放射線検査です。
同時に、X線検査がどれだけ有用なのか議論されています。特に、がんは初期発見につながっていないからです。この問題には、健診担当医がX線写真を読む能力があるのかという問題もあります。X線写真の読影能力ある健診担当医は多くないからです。およそ、X線写真の読影訓練を受けていない一般医師に初期発見はほぼ難しいといえるでしょう。担当医がX線写真を判定する能力がないため、「わからない(判定できず)まま、異常なし」としているという事例が相当数あると考えてもいいでしょう。毎年健診で異常なしとされた人が、ある日ステージWの末期がんと宣告された現実を皆さんはどうお考えになりますか。健診は正しい判定が行われて初めて意義をもつ予防医学ですが、判定が正しいのかどうか、そこに健診医療の最大の問題があるのです。
4. 健診医療の問題(医療機関・医師)
ここでは健診クリニック、健診担当医の二つの点から考えます。私たちが毎月納める健康保険(企業との折半)は病気のときに利用しますが、健診は病気ではありませんので健康保険は利用できません。一般に、保険組合や協会で健診機関との契約に従い65%程度負担しているようです。一般健診費用は20,000円程度であり、13,000円程度を保険組合や協会が、7,000円を企業または自治体や個人が負担します。組合や協会が負担するといっても、私たちが過年納めた健康保険料や補助金(税金)です。
さて、健診医療に参入する医療機関が増えていますが、関連して日本の医師免許(ライセンス)というのは世界一オールマイティだといわれます。実際に、私が知るC耳鼻科の院長は開業するまで産婦人科医でしたが、医療過誤訴訟が多く、設備資金がかかる産婦人科を避け、耳鼻科にしただけであり、耳鼻科の訓練は殆どありませんでした。また、多くの外科医は外科で開業してもビジネスが難しく、外科・皮膚科・泌尿器科、あるいは外科・整形外科で開業する事例が多いのです。やhり、外科以外の訓練は積んでいません。また、研究者(医師)が突然医師として開業することも全く同様で、大学等で30年、40年研究だけやっていた研究者が、ある日突然医師に変わるわけです。医師免許(ライイセンス)を遠い過去に取得しただけのこと、実際に医師の訓練、経験はないのです。医師の訓練、経験はない、これはペーパードライバーです。ペーパードライバーが突然公道に出る、危険極まりがありません。これらの事例など、医師の思考が歪んでいますね。
さて、健診医療に参入する医療機関が増えていますが、関連して日本の医師免許(ライセンス)というのは世界一オールマイティだといわれます。実際に、私が知るC耳鼻科の院長は開業するまで産婦人科医でしたが、医療過誤訴訟が多く、設備資金がかかる産婦人科を避け、耳鼻科にしただけであり、耳鼻科の訓練は殆どありませんでした。また、多くの外科医は外科で開業してもビジネスが難しく、外科・皮膚科・泌尿器科、あるいは外科・整形外科で開業する事例が多いのです。やhり、外科以外の訓練は積んでいません。また、研究者(医師)が突然医師として開業することも全く同様で、大学等で30年、40年研究だけやっていた研究者が、ある日突然医師に変わるわけです。医師免許(ライイセンス)を遠い過去に取得しただけのこと、実際に医師の訓練、経験はないのです。医師の訓練、経験はない、これはペーパードライバーです。ペーパードライバーが突然公道に出る、危険極まりがありません。これらの事例など、医師の思考が歪んでいますね。
健診という医療も同様です。X線写真を読めないのに健診担当医をやっているわけです。いわば、能力がないのにやっているわけです。現実に、X線写真の読影は訓練を積んだ医師でなければ読影が難しく、多くの担当医は訓練を受けていません。X線写真を判定できない(わからない)から異常なしとしている事例が相当数あるのです。
ここでも医師のライセンスだけある研究者がアルバイトで健診担当医をやっているケースが多々あり、健診医療を担う医師は臨床医としての資質、経験、能力に欠ける医師が多いという印象があります。
さらには、健診受診者にとってもっとも重要である判定そのものに医師が関与していないという驚くべき医療機関さえあります。こうしたクリニックは、その医療機関が定めたという数値だけ確認(基準内か基準外か)して異常、健康を決めつけています。すなわち、医学的な判定がなされていない、単なるデータを受診者、企業に送っている、デタラメ医療機関です。最高責任者である医師が判定に関与していないというわけです。また、厚生労働省もこうした問題ある健診クリニックを放置しています。こうしたクリニックは実質的開設者が医師ではないことが多く、医師の権限や発言力が弱く、ほとんどの場合、経営者の言いなりです。こうした健診クリニックでは自分の健康を守れないということです。健診医療機関、医師とも問題を抱えている、それが現在の健診医療の実情です。ですから、私たち受診者は自分の健康を守るために医療機関や医師をよく知り、正しく判定できる健診機関で受診するようにしたいものです。
(第44回 完)
(第44回 完)