2016年09月23日

第44回リコピンフォーラム「健康診断という医療」

第44回『健康診断という医療』

1. 健康基準値は誰が決めたのか
先日、定期健康診断を受診しました。健康診断では「その医療機関で定める健康基準値」を基に、健康か異常(病気)かを医師が判定するのが基本ですがA医療機関で異常と判定された人が、B医療機関で異常なしと判定されるという問題もあります。このフォーラムでもお伝えしてきたように、西洋医学というのは検査医学ですから、検査値を基準に健康と病気を2分する考え方をします。ですから、検査しないと病気かどうかがわからない医学で、個体差(個人差)を考えない医学です。さらに、健康診断という医療には客観的統一基準値はありません。健診機関(医師)がそれぞれ定める基準値を基に、異常かどうかを判定しているわけです。そのため、A医療機関で異常(病気)と判定しても、B医療機関で健康と判定することがあるのです。この基準値は医療機関(医師)で自由に定めることができるため(恣意的ではなく、医学界で論争状態にある基準値のいずれに従うか)、判定が異なることがあるわけです。この事実をどう考えるべきか、自分の健康を守るために重要な問題になっています。これは、セカンド・オピニオン(複数医師の判定)の必要性、その重要性と同様の問題だといえるでしょう。

2. 拡大する健診医療ビジネス
さて、ここ10年、健診医療ビジネスに参入する医療機関(健診を主にする医療機関)が拡大しています。「医療費抑制」「予防医学」がKeywodsとなって、健診が儲かる医療ビジネスになったのです。もちろん、先日、国民医療費が過去最高の40兆円を超えた報告され、医療費は抑制できていません。医療機関はいつも医療行政の変化を読み、儲かる医療に重点を移し、収益の確保・拡大に動いています。医療費の高騰?など考えないのです。まさに医療もビジネスです。20年前、急性期型医療と慢性期型医療のスキーム改革があり、慢性期医療(長期入院型医療)が儲かる医療ビジネスとして急拡大しました。しかし、介護保険の発足による医療と福祉(介護)の峻別が求められ、10年も経たぬ間に長期入院型医療から撤退する医療機関が増えたのです。ただ、儲かる医療ビジネスではなくなったのです。経営の重点を急性期型医療から長期入院型医療に移した病院はこの変遷についていけずに倒産したり、M&Aされたり、多くの医療機関から医療行政への不満が高まりました。その後、登場したのが健診医療です。健診はヒマな医療機関が行う経営の穴埋め医療とさえ言われていましたが、現在では丸の内や八重洲、新宿、渋谷といったビジネス街、繁華街に健診クリニックが開設されているように、健診医療は儲かる医療ビジネスに変貌を遂げています。
この健診医療ビジネスの大義はいわゆる「予防医学」です。医療行政による予防医学のアナウンス効果で、これまで見向きもしなかった医療機関でもこの健診医療に参入するほど、儲かる医療ビジネスに変わっています。ただ、健診も医療ですから、この医療ビジネスを行う医療機関には相当の社会的責任がありますが、上記の問題が放置されているわけです。
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3. 健診は予防医学たりえるか
人を雇用する企業は従業員の健康管理責任があり、健康診断(年1回Or2回)が義務付けられます。一方で医療行政、自治体はメタボリック健診、健康日本21運動、健康寿命を延ばそう運動など、医療費抑制、予防医学のアナウンスを強化し、企業や自治体は年1回の定期健診を推奨しています。しかし、医師であってもこの健診を受診しない(信頼しない)人は案外多いのです。私が親しい権威ある大病院のA院長(元有名大学教授・60歳代後半)は「自分は2年健診を受けてないが、市民セミナーでは年に1回受診しましょうと話すよ・・・」と笑っておしゃっていました。日本の年1回受診率は50〜60%で世界一ですが、逆にいえば半分程度です。それでも多くの先進諸国はこれほど健診は受診しません(15〜20%)。日本は世界に冠たる健診受診国なのです。
健診は予防医学に貢献できるかですが、YesでありNoであるというのが有名大学B教授の見解です。例えば、つい先日毎年健診を受診していた同僚が肺がん末期(ステージW)と診断されました。がんではこうした事例が多いのです。また、X線検査は、米国でX線検査の放射線被ばくが問題とされ、X線検査を2年に1回とするガイドラインが出されました。CT検査(マンモグラフィも)やPET検査も放射線検査です。
同時に、X線検査がどれだけ有用なのか議論されています。特に、がんは初期発見につながっていないからです。この問題には、健診担当医がX線写真を読む能力があるのかという問題もあります。X線写真の読影能力ある健診担当医は多くないからです。およそ、X線写真の読影訓練を受けていない一般医師に初期発見はほぼ難しいといえるでしょう。担当医がX線写真を判定する能力がないため、「わからない(判定できず)まま、異常なし」としているという事例が相当数あると考えてもいいでしょう。毎年健診で異常なしとされた人が、ある日ステージWの末期がんと宣告された現実を皆さんはどうお考えになりますか。健診は正しい判定が行われて初めて意義をもつ予防医学ですが、判定が正しいのかどうか、そこに健診医療の最大の問題があるのです。

 4. 健診医療の問題(医療機関・医師)  
ここでは健診クリニック、健診担当医の二つの点から考えます。私たちが毎月納める健康保険(企業との折半)は病気のときに利用しますが、健診は病気ではありませんので健康保険は利用できません。一般に、保険組合や協会で健診機関との契約に従い65%程度負担しているようです。一般健診費用は20,000円程度であり、13,000円程度を保険組合や協会が、7,000円を企業または自治体や個人が負担します。組合や協会が負担するといっても、私たちが過年納めた健康保険料や補助金(税金)です。
さて、健診医療に参入する医療機関が増えていますが、関連して日本の医師免許(ライセンス)というのは世界一オールマイティだといわれます。実際に、私が知るC耳鼻科の院長は開業するまで産婦人科医でしたが、医療過誤訴訟が多く、設備資金がかかる産婦人科を避け、耳鼻科にしただけであり、耳鼻科の訓練は殆どありませんでした。また、多くの外科医は外科で開業してもビジネスが難しく、外科・皮膚科・泌尿器科、あるいは外科・整形外科で開業する事例が多いのです。やhり、外科以外の訓練は積んでいません。また、研究者(医師)が突然医師として開業することも全く同様で、大学等で30年、40年研究だけやっていた研究者が、ある日突然医師に変わるわけです。医師免許(ライイセンス)を遠い過去に取得しただけのこと、実際に医師の訓練、経験はないのです。医師の訓練、経験はない、これはペーパードライバーです。ペーパードライバーが突然公道に出る、危険極まりがありません。これらの事例など、医師の思考が歪んでいますね。
健診という医療も同様です。X線写真を読めないのに健診担当医をやっているわけです。いわば、能力がないのにやっているわけです。現実に、X線写真の読影は訓練を積んだ医師でなければ読影が難しく、多くの担当医は訓練を受けていません。X線写真を判定できない(わからない)から異常なしとしている事例が相当数あるのです。
ここでも医師のライセンスだけある研究者がアルバイトで健診担当医をやっているケースが多々あり、健診医療を担う医師は臨床医としての資質、経験、能力に欠ける医師が多いという印象があります。
さらには、健診受診者にとってもっとも重要である判定そのものに医師が関与していないという驚くべき医療機関さえあります。こうしたクリニックは、その医療機関が定めたという数値だけ確認(基準内か基準外か)して異常、健康を決めつけています。すなわち、医学的な判定がなされていない、単なるデータを受診者、企業に送っている、デタラメ医療機関です。最高責任者である医師が判定に関与していないというわけです。また、厚生労働省もこうした問題ある健診クリニックを放置しています。こうしたクリニックは実質的開設者が医師ではないことが多く、医師の権限や発言力が弱く、ほとんどの場合、経営者の言いなりです。こうした健診クリニックでは自分の健康を守れないということです。健診医療機関、医師とも問題を抱えている、それが現在の健診医療の実情です。ですから、私たち受診者は自分の健康を守るために医療機関や医師をよく知り、正しく判定できる健診機関で受診するようにしたいものです。
                            (第44回 完)

 




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2016年05月16日

第43回リコピンフォーラム「リコピンの機能と日焼け予防」

第43回 『リコピンの機能と日焼け予防』

1. 紫外線(放射線)被害の防御
先日、TV放送でリコピンの日焼け予防効果に関する学術番組がありました。既に、このフォーラムでお伝えしてきたリコピンの機能成分の話題です。
第4回、14回、19回リコピンフォーラムほか
内容的にこのフォーラムでご紹介したリコピンの機能の再確認であり、フォーラムをご拝読いただいてきた皆さまはご存知の話題だったと思います。ただ、5月から紫外線の放射線量が冬季の2倍近く増加しているため日焼け(=皮膚の火傷、酸化現象)予防を考える機会です。近年、紫外線(放射線)に関してはさまざま研究報告がありますが、クルマの排気ガスとともに私たちの日常生活でもっとも強い細胞毒性を誘導(酸化誘導物質)します。
同時に、ファインケミカルとよばれる人工合成成分による化粧品での度重なる被害報告もあり、そうした化粧品の効果と同等の効果をもつ天然の日焼け予防化粧品ともいえるリコピンをしっかり役立てていただきたいものです。コピンの抗酸化能は天然物最大、それが日焼け(=皮膚の酸化現象)を予防するわけです。リコピンは安全、安心な日焼け防止化粧品です。ただ、リコピンは吸収されなければ意味がありませんので、必ず油脂(オリーブオイル)との同時摂取を心がけるようにしてください。トマトジュースをいくら飲んでもダメです。リコピンは水に溶けず(=脂溶性機能成分)、吸収されず、排泄されます。心ない企業の宣伝広告に翻弄されないようこれにも注意してください。

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2. 天然成分と合成成分
大手化粧品メーカーではリコピンを配合した化粧品を販売しています。ナノリコピンとか・・・吸収を考えたナノ化技術を売りにマーケティングを展開しているようです。ただ、コラーゲンやヒアルロン酸などと同じように吸収が難しいのがリコピンです。皮膚に膜をつくるのがせいぜいかも知れません。やはり、基本は体内での吸収です。また、リコピンだけが紫外線吸収予防効果があるのでなく、抗酸化能の強い天然成分は同様に紫外線被害のブロックに役立ちます。ただ、リコピンがもっとも抗酸化機能が強いということなのです。
こうした天然成分は中長期の時間軸をアタマに入れ、しっかり服用するようにしたいものです。時折、天然物だから安全なのか?という議論がありますが、基本的に天然成分は人工合成成分より安全といえます。これも議論に流されないようにしましょう。人工合成成分のファインケミカルとは高純度の原油産物です。このファインケミカルは化粧品だけでなく、日用品、クスリ、食品でも利用されています。一方、歴史的経験を積み重ねた天然成分は安全です(クスリでは漢方薬)人工合成された新規成分というのは自然界、地球上に存在しない成分のこと(人が合成した人工成分)です。すなわち、まったく歴史的経験を経ていない成分であることです。問題を起こす人工成分のほとんどがこの「歴史的経験」を経ていない成分です。
また、危険な天然成分は歴史のなかで使用が途絶えていますから、「歴史的に継続している天然成分」は安全と考えていいのです。これは重要な視点なのです。天然リコピンとはトマトの成分です。トマトは歴史的に継続してきた食品ですから、説明することもなく安全を疑う人はいないでしょう。
こうした視点は新規合成されたクスリ(いわゆる新薬)に関しても同じです。研究開発段階でわからない被害(副作用)が認可されて多数報告されます。開発段階(臨床実験)の500人、1000人ではわからないだけで、認可されて10000人に使われるとわかるということです。「歴史的経験」の積み重ね(数量)はもっとも真実に近いといえるのです。こうした集積の結果、人には個体差があるということもわかるわけです。 


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2016年01月06日

第42回リコピンフォーラム「未病-健康と病気のあいだ」

第42回 『未病 −健康と病気のあいだ』

1. 神奈川県-未病プロジェクト
「未病」-みびょう-という言葉−医学用語をご存じの方も多いと思います。神奈川県は健康寿命延伸プロジェクトとして、未病の克服-予防医学-を推進しています。行政の健康増進プロジェクトとして「未病」を据えているのです。大手企業時代、私は医師へのメッセージで「個の医療」というキーワードを情報発信しましたが、現在では個別化医療またパーソナルメディスン、ゲノム医療など、さまざま類語が日常使われる時代になってきています。
「個の医療」、「未病」という言葉は、東洋医学の根幹にある大切な考え方をあらわす医学用語です。東洋医学的な診断を診療(治療)に採り入れる医師(薬剤師)が増えたのはいいのですが、東洋医学の根幹を学ばず、漢方薬を西洋薬(合成新薬)と同様に考えてしまう医師がまだまだ多いというのが現状です。「個の医療」や「未病」の言葉であらわされる東洋医学の根幹を学ぶ−それが東洋医学を診療に役立てるために必要なのです。その意味で、神奈川県が進める今後の未病克服プロジェクトには大いに期待しているわけです。

2. 病気とは何か、どうとらえるか
病気は−高血圧、腰痛、心臓など・・・臓器の働き、機能低下した状態と考えることができます。外的要因のインフルエンザなど、感染症もやはり生体防御機能の低下が背景にあります。前回、ノーベル化学賞のDNA損傷・変異の修復・排除メカニズムの研究について話しましたが、これも生体機能の低下です。このように、健康は生体機能が保たれている状態ということができ、病気は機能が低下した状態と考えることができるでしょう。
西洋医学は検査医学です。検査値のある地点で病気を宣言します。すなわち、検査値で線引きし、健康人か病人かのいずれかに2分する考え方です。例えば、高血圧症は85-130mmHgを正常値血圧と決め、89-139mmHgまでを高血圧症前段階、90-140mmHg以上を高血圧症(日本高血圧学会)と決めています。ところが、このような検査値だけを基準にすると、治療によって不健康になる人もいるわけです(医原病)。年代を問わず個体差はありますが、特に高齢者では個体差が大きく、検査値だけをもとに治療する西洋医学では十分な治療ができません。ですから、東洋医学(特に漢方薬)を採り入れる医師がどんどん増えているわけです。東洋医学では病気と健康を検査値で2分せず、個人ごとのそれぞれの病態の段階を注視します。
そして、この個体差は患者さんと医師のコミュニケーションによってわかるわけです。これは「問診」とよばれる診察ですが、特に東洋医学がもっとも重視している診察です。検査値にあらわれない症状、日常生活の点検によってその人の個性(個体差)がわかることが多いためです。近年はストレス医学(心療内科)という分野があり、同様に問診を重視します。問診は個体差があることを前提にし、各人の症状(個体差)の把握に力点を注ぎ、同時に未病を把握することが目的です。ですから、この問診は検査値に未だあらわれない症状-未病-を把握するために重要な診察です。およそ、3分診療で把握することはできません。まさに「個の医療」の実践、すなわち個体差がある(大きい)ことを前提とした診察、治療といえます。

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3. 未病を治す
未病を治す−検査値にあらわれないさまざまな症状を把握し、検査値で異常となる前に(病気になる前に)、自らあるいは医師と共同で予防医学に取り組む考え方です。通常、検査値は正常(健康)の範囲内にあり、西洋医学では病気と判断しません。いわば健康人です。一方、東洋医学は未病」という病気として診断することがあります。
東洋医学はなぜ未病という概念で健康と病気をとらえようとしているのでしょうか。東洋医学は検査値だけで健康と病気を2分する診断をしません。個人差があることは初めから前提ですから、検査値が同じでも、ある人は病気、ある人は病気といえないと診断することがあります。そして、「健康と病気は個体差をもったそれぞれ個人の段階的違い」と見ます。ですから、最高血圧が140mmHg以上でも病気といえない人がいるわけです。こうした診断は極めて現実医療に近いといえるでしょう。
また、東洋医学では同じ病気の治療も各人でクスリ(漢方薬)が異なる(同病異治)、各人の病気が異なっても同じクスリで治療する(異病同治)ことも普通のことです個体差を重視する東洋医学は、検査値だけで診断せず、また治療するクスリは(漢方薬でも合成新薬でも)一律でなく、各人の必要な薬を選択することにつながります。これは個の医療が、あくまで「その人が」病気かどうかが問題だからです。
検査値医学、すなわち西洋近代医学は「一律に病気を判定する」有力な診断法ですが、検査値を見なければ病気かどうかわからない・・・西洋医学の考え方はどこか医者助けのように思えます。医師と患者のコミュニケーションが現実医療でもっと重視されて然るべきでしょう
強い冷え症、習慣性の頭痛やめまい、不眠などは東洋医学的に未病と診断されることが多い代表症状ですが、こうした症状でも人によって(個体差)異なることが当然あります。未病の診察はやがて病気につながるであろう前段階症状を把握することですから、早めに予防医学に取り組むことができるわけです。予防医学は多くの場合、生活習慣の改善、食生活の改善が基本となります。特に、日常生活では運動習慣、また、食生活では添加物に注意する必要があるといえます。実際にも、そうした意識改善で相当な未病が改善されていきます。
                                              (第42回 完)



posted by 高原裕一 at 20:16| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月09日

第41回 リコピンフォーラム「ノーベル賞」

第41回 「ノーベル賞」

1. 医学・生理学賞と化学賞
今年、東京・白金の北里研究所前所長の大村 智先生がノーベル医学・生理学賞を、千葉・柏市の東大宇宙線研究所所長の梶田隆章先生がノーベル物理学賞を授賞されました。特に、医療のフィールドで私もご面識ある大村先生の授賞は、先生の長年にわたる研究への取り組み、その成果が世界で見事に評価されたことを嬉しく思いました。江崎玲於奈先生(物理学賞)、故福井謙一先生(化学賞)、利根川 進先生(医学・生理学賞)、そして今回の大村 智先生と、ノーベル賞を授賞された先生方と私もこれまでにそれぞれ交流させていただきましたが、皆さまホットな人間的魅力、個性をお持ちの先生方です。
さて、大村先生の研究成果はアフリカを中心に2億人(10億人?)を失明の危機から救ったクスリ(イベルメクチン)ですが、既に数々紹介、報道がなされています。ここでは化学賞 『DNAの修復メカニズムの解明』 もとりあげたいと思います。
蛇足ですが、化学賞と医学・生理学賞の区分はよくわかりません。今回の化学賞は「がん、老化のメカニズム」に関係する研究成果です。私たちのカラダをつくる細胞は60兆とも100兆ともいわれ、日々数千万もの細胞が変異していて、それを日々修復しながら(一部は排除)再び活動しています。その変異細胞を修復する生体のメカニズムに関する研究が今回の化学賞です。これも医学・生理学賞では?と思ったわけです。ちなみに、大村先生の研究は天然物化学、有機合成化学といわれる分野です。臨床的、基礎的という区分があるかもしれません。化学賞も3名の研究者が授賞されています。

2. エバーメクチン
大村先生のエバーメクチンですが、伊豆のゴルフ場の土に棲んでる細菌(放線菌)がエバーメクチンの研究へ発展しています。この細菌がマクロライドという抗菌活性の強い代謝産物(大村先生はエバーメクチンと命名)を産生していたのです。現在、医薬品には多くのマクロライド系抗生物質があります。大村先生はメルク社との共同研究によってこのエバーメクチンが家畜・動物の寄生虫駆除に有効であるとわかり、動物薬として販売されました。その後、メルク社とともにエバーメクチンの改良を重ね、人が利用できるイベルメクチンが合成されました。このイベルメクチンがアフリカ諸国や中南米諸国の寄生虫感染を予防する薬として2億人以上の人に(特に子ども)利用され、失明を予防したのです。マクロライドを産生する微生物からそうしたクスリが開発されたことから、大村先生は「微生物のおかげ」と授賞の喜びを語っていらっしゃいます。
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3. DNAの修復メカニズム(化学賞)
DNAは遺伝子です。私たちは人間は60兆ともいわれる細胞の集合体ともいえますが、細胞の新陳代謝(細胞分裂)を司るのがDNAです。DNAは大変傷つきやすくて、太陽の紫外線、タバコや排気ガスの有害物質、生体内で発生する活性酸素などによって絶えず傷ついています。そして、傷ついて変異したDNAは修復され(あるいは排除され)ながら、私たちの生涯を形成しているわけです。
リンドール先生(英国・Fクリック研究所)は、酸化によって変異したDNA(CシトシンのUウラシル化)をチェックし、DNAの修復を修復する(排除する)メカニズム(DNAの塩基除去修復)を解明されました。がん、老化に関係します。
サンジャール先生(米国・ハワードヒューズ研究所)は、太陽の紫外線損傷によるDNA(チミン)をチェックし、連続したDNA(Tチミン)を修復する(除去する)メカニズム(DNAのヌクレオチド修復)を解明されました。特に皮膚がんに関係します。
モドリッチ先生(米国・ノースカロライナ大学)は、細胞分裂で転写される30億文字(塩基)では3万文字程度が間違って転写されるのをチェックし、修復する(除去する)メカニズム(DNAのミスマッチ修復)を解明されました。多くのがん発症に関係します。
これらの研究はいずれも1970〜80年代に成果が発表された研究です。

4. DNA修復メカニズムとがん、老化
3人の化学賞の研究成果は、がん、老化に大きく関わる研究です。この修復メカニズムが適正に機能していると、傷ついたり変異したDNAは日々修復され、また排除され、細胞分裂が正しく行われます。しかし、何らかの理由でメカニズムをすり抜けた変異DNAがあると身勝手な細胞分裂を行うようになります。それらが老化を促進したり、がんを発症させる細胞です。この修復メカニズムを狂わす大きな原因の一つは身近にあふれる活性酸素です。私たちの体内、体外にあふれる活性酸素対策は健康維持に極めて重要な要素だといえるでしょう。現代生活は紫外線(放射線)、電磁波(特に発熱電気機器)、タバコや排気ガス、食品の人工添加物質、クスリなど化学物質・・・実に多くの活性酸素誘発物に取り囲まれています。眼に見えない強力な細胞毒である活性酸素こそ、この修復メカニズムを狂わせ、病気を発症させる最大原因といってもいいのです。
ですから生活環境、食生活などを見直し、改善すべき点を見出すのがまず第一です。紫外線、タバコ、電化製品(発熱型電気器具;特にヘアドライヤーは活性酸素の誘発脅威)、添加物だらけの飲食物(ジャンクフード、コンビニフードは要警戒)、住環境(排気ガスの多い幹線沿いで生活する人)など、可能なことをまず改善する、そんな意識と行動が求められます。食生活では加工食品の摂取比率を低下させ、野菜を2倍に増やすようにしましょう。また、便利過ぎるほどの電化生活からまず何か一つ遠ざけましょう。
がんの発症や老化の進展はこのDNA修復メカニズムの機能低下に起因するといえるでしょう。そして、その大きな原因は過剰な活性酸素の誘発、便利過ぎる現代生活にある、そう考えていいと思います。「エコ生活」が話題になっていますが、エコ生活とは身の回りから活性酸素を減少させる生活といえるのです。
                                            (第41回 完)




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2015年08月05日

第40回 リコピンフォーラム「リコピンとがん予防」

第40回 「リコピンとがん予防」

1. リコピンが前立腺がんを予防
トマトに含まれるカロテノイド成分、「リコピンの摂取量が多いほど遠隔転移や死亡につながる致死的前立腺がんの発症リスクが低い」−ハーバード大学の研究論文が米国NCI;国立がん研究所研究雑誌に公表されました(2014年)米国の40〜75歳49,898人を対象とするコホート研究(疫学調査)で、リコピンの日常摂取量と前立腺がんの発症リスクに関してリコピンの一日摂取量で5グループに分け、20年にわたって調査研究しています。その結果、リコピンの一日摂取量が最少グループ(3,160マイクログラム)と最大グループ(13,391マイクログラム)では約4倍の発症リスク差が認められたという研究です。全グループのリスク差は0.91、致死的前立腺がんグループ(658人)では0.72という大きなリスク差が確認されました。さらに、前立腺がん患者(5,728人)の病理組織検査ではリコピン摂取量の少ないグループでがん組織周辺の血管新生が顕著であり、進行しやすいがんであることもわかりました。本研究はリコピンによるがん血管新生の予防可能性に関する初のヒト(臨床的)による調査研究です。
この調査研究によって、リコピンだけが前立腺がんの発症を予防するとはいえないものの、がんの発症リスク低下とリコピン摂取量には一定の相関があることがわかり、注目が集まっています。本調査研究は20年で6回にわたり、病理組織検査がされているなど、かなり詳細にわたる信頼性の高いコホート研究になっています。
一方、食品(成分)による予防効果というのはクスリと異なり、短時間で自覚できる効果はほとんどありません。本調査研究でも20年に6回調査を行っているように、予防医学の効果確認は1ヶ月ではなく、1年また10年という時間軸で考えるべきことを示しているともいえるわけです。

*なお、第1回、第6回、第32回フォーラムでもリコピンとがん予防の解説をしています。また、米国NCI(国立がんセンター)と情報連携している「がん情報サイトPDQ」(cancerinfo.tri-kobe.org)も同様に関連情報を取り上げています。

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2.抗炎症・抗酸化とがん予防
慢性炎症は発がんリスクを高めることが知られていますが、がんは炎症疾患であるという研究報告があります。炎症疾患には活性酸素が関与していることも明らかとなり、活性酸素(フリーラジカル)はDNA損傷はじめ、がんの発症に関与します。私たちが日々予防医学としてできること、食生活で野菜摂取量を増やし、カロテノイドやポリフェノール成分の摂取によって抗炎症・抗酸化力を高めることです。天然植物医薬品である漢方薬は原料生薬の多くにポリフェノール成分(フラノボイド)を含んでいるため、漢方薬は抗炎症作用をもたらすものが多くなっています。「抗炎症・抗酸化」は健康維持、予防医学(病気の発症予防)を考えるうえで極めて重要なキーワードです。それは、慢性炎症状態、慢性酸化状態は多くの病気の発症リスクを高めるからなのです。私たちは植物(野菜・生薬)が自然と闘いながら成長するチカラである抗酸化成分を予防医学で活かすことができます。病気の発症に活性酸素が関与していることを忘れないようにしたいものです。

3.活性酸素消去と日本食
酸素は生物が生きるうえで必須です。食べた栄養は酸素によって酸化されてATP(エネルギー源)が合成され、それが生命活動エネルギーになります。ただ、酸素は体内に常に1〜2%余分にあり、活性酸素を発生させます。活性酸素はフリーラジカルといい、強力な酸化力でたんぱく質やDNA、脂質などを傷つけ、その連続的酸化ががん、動脈硬化、心臓病などを発症させるといわれます。一方、体内にはこうした活性酸素を消去(中和)するシステムがあって、抗酸化物質を産生しています。ただ、活性酸素を消去するのに生体システムだけでは不十分であることが指摘されており、日々植物(野菜)の抗酸化成分を補給することが大変重要な課題になっているわけです。また、日本食は抗酸化食と言っても過言ではないほど、お米はじめ穀類、魚介類、豆類、野菜類、海藻類を中心に肉類、卵類、乳製品はほどほどにと、まさに文化遺産として多種多様の抗酸化物質を補給することができます。お茶のカテキン(フラノボイド)、コーヒーのクロロゲン酸(ポリフェノール)、ゴマのセサミノール(リグナン)、トマトのリコピン(カロテノイド)など、抗酸化機能に関する研究報告が多い、代表的抗酸化成分です。

*フラノボイド・・・ポリフェノール系化合物で、野菜・果実・豆類などに含まれる。フラバン核をもち、OH基、糖を結合した配糖体で存在するものが多い。

                                (第40回 完)
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2015年07月07日

第39回 リコピンフォーラム「予防医学−機能性食品と医薬品」

第39回 「予防医学−機能性食品と医薬品」

1. 健康食品2兆円、医薬品1兆円
現在の健康食品市場は2兆円を超えるまでに成長しました。一方、OTC(薬局で買える医薬品:いわゆる大衆薬)市場は1兆円で、ここ10年以上成長していません。さて、日本OTC医薬品協会・吉野俊昭会長は、この春始まった新たな食品の機能性表示制度に関連し、消費者庁・坂東久美子長官宛てに「食品の機能性表示制度に関する申し入れ」を行いました。「消費者保護の観点に立ち・・・」と、消費者庁が消費者のために決定した食品の機能性表示制度に関して(OTC協会は何様でしょう)、消費者庁に忠告したわけです。OTC協会の申し入れは消費者保護の観点と言いつつ、自己利益保護のために行ったものといっていいでしょう非常に残念な団体行動といえます。

2. セルフメディケーションと予防医学
さて、OTC協会は大衆薬によるセルフメディケーション(自己治療)を啓蒙、推進しています。セルフメディケーションとは、軽微なケガや病気を自分で治療しましょうという、自己対処、自己治療です。一方、食品の機能表示は、なるべく病気にならない(予防)生活をめざし、食品の栄養機能成分を知って健康維持に役立てるための制度であり、予防医学(病気予防)の意識向上をめざす消費者支援(健康維持)といえます。OTC協会は何を勘違いしているのか、この団体に今回の申し入れをする根拠は見出せません。
予防医学への意識向上は社会的、国民的課題です。医薬品は病気・ケガの治療のためにあり、基本的に予防医学の対象外です。また、医薬品は予防医学の意識向上や健康寿命の延伸によって日常生活から遠のくという構造、ケガ・病気の治療を前提に存在しているわけです。一方、食品には食生活の質的向上、健康維持を延長する(予防医学の支援)という目的があります。ですから、この制度は医薬品をなるべく使わず、健康な時間を長く保つ(健康寿命の延伸)ことを目標にしているといえます。OTC協会はこの制度の普及、すなわち食生活の質的向上、予防医学の意識向上によって消費者がクスリから遠のく−すなわち自らの利益減少を恐れた行動といわれても仕方がないのです。私たちは食の質的向上によってクスリを使わない日常生活をめざすことが大切だからです。クスリは基本的に毒物(人工合成物)です。なるべくクスリに頼らない健康な時間、食生活の充実を通じた健康維持を保つようにしましょう。
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3. セルフプリベンション(自己予防)
私たちはこの機能性食品表示制度の発足を機に、セルフメディケーション(自己治療)ではなくセルフプリベンション(自己予防)をへの意識を高めることが大切です。病気になって(治療)ではなく、病気にならない生活習慣(予防)こそが大切だからです。そういう意味で医薬品市場が伸び悩むことは本来喜ばしいことです。クスリ(医師・薬剤師)に頼る前に自らに頼る(予防医学)、予防医学の実践が健康のためにもっとも大切だということです。セルフプリベンション−予防医学の実践として、日々の「食(水・空気も含め)・運動・睡眠」を見直しましょう。運動も決して無理をすることはありません。自分ができることをまず始める、日常行動として日々継続する(習慣にする)、それに尽きます。
長野県・松本市の健康ウォーキング教室(指導者:信州大学教授・能勢 博教授)がしばしばTVなどメディアで取り上げられているのをご存じの方も多いと思います。このウォーキング教室の根幹は「インターバル速歩」とよばれるウォーキングです。スピード歩行とゆったり歩行を組み合わせた歩行(3分ずつ)ですが、健康維持にとどまらず、医療(治療)の側面からも注目されるウォーキング方法として特筆されます。筋力維持はもちろん、腰痛改善、血圧改善、コレステロール改善、血糖値改善、睡眠の質改善など、まるで好ましい医療(治療)かのような報告が多くなっています。(www.jtrc.or.jp:熟年体育大学)
こうしたセルフプリベンション行動がクスリに頼るより好ましいのは明らかです。このインターバル速歩はそれほど負荷のかかるウォーキング方法ではありません。熟年に限らず、老若男女、誰でも、どこでも、すぐに実践可能なウォーキング方法です。食の質向上−加工食品はストップ−そして自分ができる運動習慣をもつ、それがまず始めるべき予防医学です。

4. 食品の機能成分を健康維持に活かす
食品の機能表示制度では健康康品だけでなく、一般の野菜(キャベツ・ホウレンソウなど)でも表示が進むことが期待されています。また、既に健康食品、サプリメントでは機能表示が始まっています。ただ、天然の食品機能成分はクスリのようにすぐ効果を自覚できるものはありません。数ヶ月、数年という時間軸のなかで自覚するものです。Aという食品の効果は何?、何に効くの?という会話をときおり耳にしますが、食品はクスリと異なります。とにかく安全である、それが基本です。何に効くと語る効果はあるか?、これは時間軸の問題であり、1ヶ月で効果はなくても1年ではあるともいえます。それが食機能の本質です。これは栄養機能成分に限ったことではなく、糖質やたんぱく質、脂質という基本栄養素でも同じです。食品成分は継続摂取が前提です。これまで長い間、食品に関して栄養機能成分(研究も)がおろそかにされてきました。3大栄養素は意義が明らかでしたが、微量成分であるビタミンやミネラル、フィトケミカル、これら栄養機能成分に関して意識や研究が遅れていました。まさしく 『食はときに栄養となり、ときにクスリになる』(中国医学)のです。

関連して、食品と同じ天然成分でも比較的効果を自覚しすいものに漢方薬(クスリ)があります漢方薬はいわゆる薬用成分を高濃度に含んだ食品成分といえます。同じ天然成分であり、基本的に食品成分と同様です。一方、野菜に含まれるビタミンは天然成分だけでなく、人工合成されたビタミン薬(クスリ)もあります。さらに、漢方薬の素材原料、生薬には一般食品もあります。(生姜(ショウガ)、大棗(ナツメ)、葛根(クズ)、桂皮(シナモン)、陳皮(ミカンの皮)、胡麻(ゴマ)、薄荷(ハッカ)など)。漢方薬は薬用成分を含んだ天然成分ですが、多くの生薬にポリフェノール(フラノボイド成分)が含まれており、活性酸素やフリーラジカルの消去作用をもっています。その意味で「食はときに栄養であり、ときにクスリである」わけですが、そこが多くの近代薬(人工合成物)との最大の差です。ですから、食を通じた健康維持が第一、クスリは漢方薬を用いて治療するのが第一ということになります。可能な限り漢方薬での治療が好ましいと考える医師も増えています。近代薬は自然界に存在しない人工合成物であり、本来的に人体になじまない物質です。そして、毒性があります。それをクスリとして役立つ有効範囲で活用しているわけですが、基本的に毒物であることは否めません。ですから、そうしたクスリ(近代薬)に頼る前に食の質向上こそが大切な取り組みなのであり、それが予防医学の実践、セルフプリベンション行動になります。
                               (第39回 完)


posted by 高原裕一 at 19:18| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月12日

第38回 リコピンフォーラム 「食品の機能表示-抗酸化機能」

第38回 『食品の機能表示-抗酸化機能』

先頃、食品の抗酸化力などの表示に関連し、第8回AOU研究会が開催されました(2014;11/26 虎の門ヒルズ)。この研究会は既に米国で始まっている食品の抗酸化力(活性酸素の中和力)表示を進める研究会です。AOUは、Anti Oxidant Unit(抗酸化物)の略ですが、この春日本で始まった食品機能表示との関連でも注目される食品機能です。

1. 食品の機能表示制度
食品の表示に関し、現在、「特定保健用食品(トクホ)」および「栄養機能食品」の制度があり、一定の表示が認められています。前者は加工食品(サプリメントなど)および生鮮食品・野菜など、後者は加工食品で認められている制度です。一方で、何ら根拠を持たずに、まるでダイエット効果があるかの表示(宣伝)をし、消費者庁から処分を受ける企業もあります
さてこの春、一歩進んだ食品の機能表示が始まりました。これはトクホ同様に、健康食品、サプリメントを含む食品一般の機能表示ですから、キャベツや白菜、ホウレンソウといった日常野菜でも適用されるものと思われます。今回の制度ではトクホ(臨床試験)ほど根拠は必要ではなくなりました。臨床効果に限定せず、当該成分の研究報告(システマティック・レビュ−)を申請し、企業責任で表示できる規格基準型制度になっています。
しかし、栄養成分やクスリ成分など口から入る飲食物はどう分解、代謝、分布、吸収、排泄されるか、それが重要、関心も高いわけです。特に、クスリは容量次第で毒になりうる成分のため、「クスリとして利用できる量(至適容量)」や副作用(有害事象)を調べる試験が必須とされています。それでも市販されてからそのクスリで亡くなるニュースは度々起きています。食品は誰もが毎日摂るものですから、これは容量次第で毒になったり、副作用(有害事象)をもっていては大変です。当然ですが、「安全」か、そこに最大の重きがおかれ、食品の機能に関してはこれまで重きが置かれませんでした。ただ、「安全」というのも短時間でなく、長時間でわかるものがあることに留意が必要です。一部の食品添加物のように急性毒性(短期)はなくても長期的に蓄積し続け、毒性が高まっていくものもあるからです。

2. クスリに頼る前に健康な食生活!
病気になるのは突然の出来事ではありません。がんだけでなく、病気は10年あるいは20年の歳月を経て発症するといわれます。ウイルスなどの外来原因は別に、高血圧症、糖尿病、動脈硬化など自身の内なる要因を主因とする病気の多くが年月を経てから発症します。「病気は10年前の生活習慣」といわれたりします。長年、塩分の多い食事を積み重ねたり、喫煙していたり、動物油脂の多い食事を続けていたり、野菜をほとんど摂らない食事であったり、ジャンクフード・コンビニフードを常食にしたりと・・・。PM2.5というイオウ酸化物が問題になっていますが、トラックやバスなどが日夜走る沿道に住む方も多いかもしれません。広く食生活を考えるとき、住環境、空気(酸素)、水も大事な要素です。私たちの健康は60%がそういう意味での食生活で決まるといわれますが、人生80年と考えたとき「健康な食生活」についてもう一度考えてみる必要があるでしょう。また、クスリは自然界に存在しない人工合成物、人工化学物質です。クスリには必ずマイナス(副作用)、毒性がありますマイナスがあるがプラスがある・・・その1点で使われるのがクスリという人工化学物質です。

さて、食生活で「糖質制限食」が話題となり、専門家(医師・薬剤師・栄養士)もその当否を議論しています。特にがん、糖尿病、肥満の治療(食)として活発な議論があります。糖質(炭水化物)は酸素で燃やされエネルギー転換する栄養素ですから、「糖質制限食=摂取エネルギー制限(抑制)」と考えていいでしょう。がん細胞は自分自身の変異した細胞が修復、排除されずに生き残った細胞であることをお話しました。そして、この変異細胞(がん細胞)は、今度はコントロールを受けることなく勝手に細胞分裂し、増殖します。この変異細胞(がん細胞)が分裂、増殖するとき通常の細胞分裂より多くのエネルギーを必要とすることがわかっていて、エネルギー(体力)が格段に消費されます。そこで、エネルギーを抑制し、がん細胞の分裂、増殖エネルギーを抑えようという目的で糖質制限が提案されています。また、糖尿病の治療では血糖値のコントロールを最重視しますが、糖質摂取を抑え、血糖(ブドウ糖)上昇を抑えようという考え方です。いずれも「摂取エネルギー制限」を主眼とする治療(食)といえます。
現代は栄養過多、エネルギー過剰の時代といってよく、そのエネルギー過剰がさまざま病気を引き起こす原因になっています。果たして、自分の生活にそれだけエネルギーが必要なのか、この機会に摂取エネルギーについて十分考えたいものです。有名な食評論家が野菜を2倍食べ、糖質を制限し、20Kg痩せたという話題がありました。シンプルで実に理にかなっていると思うわけです。これはダイエット(健康なカラダになること)の基本だからです。特に、野菜の増量です。野菜は代謝機能を高めるビタミン、ミネラル、フィトケミカルを含んでいます肥満の人は消化、代謝機能が落ち、糖質、脂質が十分代謝されない人が多いためです。糖質(炭水化物)、脂質が栄養原料(エネルギー)となり、それらを分解、代謝、分布、吸収、排泄するコントローラー、それがビタミンやミネラル、フィトケミカルというわけです。

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3. 抗酸化力表示の意義
抗酸化力とは、活性酸素と結合することによって活性酸素の毒性を中和(消去)・無毒化する力です。「酸化」は、酸素を利用して生きる生物にとって避けられない生体反応です。身近なところで金属のサビ、リンゴを放置したときの赤色化などがあります。私たちのカラダも同様に酸素(活性酸素)でサビるのです。活性酸素は電子を失って不安定(フリーラジカル)になって体内(細胞)で彷っている酸素です。この電子を失った酸素(活性酸素)は安定しようとして他物質(細胞など)の電子を奪う=攻撃するのです。この攻撃が病気の発症に関係します。特にがん、アレルギー、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、消化性潰瘍などは活性酸素の関与が報告されています。病気の発症は時間軸では長時間の結果であるため、私たちは日々活性酸素の攻撃を実感することはありませんが、活性酸素は細胞毒性(攻撃力)が強いことを知ってください。
多くの野菜にはその活性酸素と結合する力のある(中和、消去する)抗酸化成分(ビタミンやカロテノイド、ポリフェノール)が含まれています
抗酸化力が強い」というのは、抵抗力が強いのではなく活性酸素と結合する力(反応する力)が強い」ということです。ですから、抗酸化成分が体内に豊富であればその抗酸化成分が活性酸素と結合してくれ、細胞は活性酸素の攻撃から免れます。体内でもこうした成分が合成されますが、エイジングとともに低下しています。ですから、日々野菜から抗酸化成分を補給することが大切なのです。抗酸化成分ではビタミンCやビタミンEをご存じだと思いますが、近年はフィトケミカル(リコピンなど)に注目が集まっています。米国では数年前から食品(野菜、サプリメントなど)の抗酸化力を参考指標としてラベル表示しています。日本でも農林水産省の外部機関やAOUなどで検討が進められています。ただ、抗酸化力の意義に関するコンセンサスはあるものの、抗酸化機能成分の検証や体内での抗酸化機能の働きを巡って議論があるようです。

これに関連し、クスリは代謝され、どの程度クスリの成分が血中へ移行するか、体内利用率(バイオ・ライアビリティ)が検証されます。しかし、この検証も現実医療とはかけ離れていることが指摘されています。それは、数種類のクスリを併用したクスリの体内動態は検証されていず、わからないからです。食品成分(天然成分)はクスリ(人工合成成分)より働く機能が数段弱く、相互作用や相乗作用もクスリより弱いといえます。食品に含まれる機能成分はクスリのように明確に測定できません。また、クスリでも天然の機能成分(薬用成分)である漢方薬は食品成分と同様です。天然成分は人工合成成分(クスリ)より緩やかな作用をもっていて、だかこそ毎日安心して摂ることができるわけです。抗酸化力表示を期待している人は多く(70%以上という調査報告があります)、日本でも早く米国並みの抗酸化力表示がなされるよう期待しています。
                                        (第38回 完)

posted by 高原裕一 at 17:57| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月11日

第37回 リコピンフォーラム「世界文化遺産としての和食」

第37回 『世界文化遺産としての和食』

先頃、日本の伝統和紙文化がユネスコ無形文化遺産として登録されたことをご存じと思いますが、日本の 「和食(日本食)」が  「地中海食文化」 「メキシコ食文化」とともにユネスコ無形文化遺産に登録されていることはご存じでしょうか。伝統だけではありません。なぜ、日本の和食が文化遺産とされたのか。「日本食と健康」について考えたいと思います。
*登録は他にも、フランス食レシピ(食美術)、トルコ食レシピ(麦粥ケシケキ)、韓国食レシピ(キムチ)などがあります。

1. 和食(WASHOKU;日本伝統食)
日本食とその食文化が無形文化遺産となり、国際的に守られるべき食文化とされました。日本食(和食)はお肉がメインディッシュではなく、野菜(山)と魚介(海)がメインディッシュになっているレシピです。 

@新鮮、多様な山・海の産物を食材にしていること。材の持ち味を引き出し、引き立てる工夫がされていること。 
Aお米、味噌汁、魚介、野菜・山菜などがバランスよく構成されていること。動物油脂を多用せず、長寿や肥満防止に寄与すること。 
B料理に葉や花などをあしらい、美的に盛りつける表現が発達したこと。季節にあう食器や部屋のしつらえがなされること。 
Cお正月などの年中行事と関わる食事の時間を共有し、家族、地域の絆を強化してきたこと。
以上、「自然を尊重する日本人の精神を体現した食の社会的慣習」であるとされ、ユネスコ無形文化遺産に登録されたわけです。

特に、お鮨は今や世界食になりつつあるわけですが、和食は動物脂肪・油脂(赤み肉)をほとんど使わないのが大きな特徴であり、地中海食とならぶ世界でもっともヘルシーな食事・食文化といってもいいでしょう。そして、米国の心臓病学会・脳卒中学会が予防ガイドラインで推奨するDASH食ですが、それはこの日本食(和食)に近似するといえそうです。

2. DASH食(米国)
DASH食というのは Dietary Approaches Stop Hypertension の略で、「高血圧予防食」です。 高血圧は心臓病や脳卒中(脳出血・脳梗塞)イベントの発症に結びつきやすいため生活習慣の改善が求められます。まず第一に食生活の改善です。米国では、長年の調査から高血圧、心臓・脳疾患イベントを発症した人は動物脂肪(動物油脂)の過剰摂取が顕著であるためガイドラインは心臓病学会と脳卒中学会が共同で動物脂肪の摂り過ぎに警鐘を鳴らしたということです。
前回、一人あたりの各国の赤み肉摂取量を報告しましたが、米国ではこうした運動もあって赤み肉の摂取量が毎年低下し続けており、今では30年前のほぼ半分24Kg(牛肉)になり、さらに減少が続いています。
1980年代のデザイナーフーズ計画、近年のDASH食の取り組みで米国人の食生活は動物油脂の過剰摂取が改善されてきていて、野菜、魚介、木の実、穀類、海藻、白み肉(鳥肉)などが増えています。一方、日本でも動物脂肪の摂り過ぎが問題になりつつあります。動物油脂はカロリーが高く、エネルギー過剰になりがちです。例えば、一日500Kcalしか消費しない人が2500Kcal摂れば、基礎代謝(男性1400〜1500Kcal/女性1200〜1300Kcal)を考えてもエネルギー過剰(500Kcal過剰)になります。それが何年も継続くならどうなるでしょう。肥満、糖代謝異常(糖尿病)、高血圧など、エネルギー過剰から引き起こされる病気は多彩です。お肉(特に赤み肉)を多食する人はエネルギーをいとも簡単に摂ってしまいがちです。野菜は繊維質(ファイバー)が多く、それが水分で膨らんで消化に時間がかかり、満腹感をもたらします。お肉はすぐに消化されてしまい、食べ過ぎになりがちなことは心得ておく必要があるでしょう。お肉の方が圧倒的にエネルギー量は高く、簡単にエネルギーを得る(動物脂肪に偏った栄養)ことができるのです。40歳過ぎたらエネルギー総量を減らしましょう。甘み系のお菓子、ジュースなども減らした方がいいでしょう。健康のためにも文化遺産である和食に回帰しましょう。現在の米国ではDASH食などで食生活の改善運動が活発になっています。
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3. 地中海食(ギリシャ・イタリア・スペイン・モロッコ)
地中海エリアは心臓・血管系の病気やがん発症率が低いことが注目されています。オリーブ油やトマトが日常食というこのエリアの食事は世界一の健康食ともいわれ、医学的に注目が高まっています。成人病予防に最も役立つレシピと言っていいのかも知れません。日本でもトマト鍋は流行しているようですが。
まず第一にトマトとオリーブ油がベース(出汁)のレシピであり、トマトはうまみ成分であるグルタミン酸をたっぷり含んいます。そこに穀類・芋類や野菜・豆類・山菜・木の実・海藻・魚介・鶏肉(白み肉)を混載したのが地中海レシピです。赤み肉(牛・豚)と乳製品はほとんど用いず、魚介をたっぷり使います。また、ポリフェノールが豊富な赤ワインがプラスされたりもします。
地中海沿岸の国は他の国より心・血管系疾患(冠状動脈疾患)が少ないことが「7カ国共同研究」で明らかになり、糖尿病の発症リスクを40%低下させたことも明らかにされました。これに関連し、オリーブオイルの高摂取(摂取エネルギーの30%以上)が注目されます。それは油脂のほとんどはカロリーの高いオリーブオイルですが、高摂取にも関らず肥満や心臓病、がんなどが少ないからです。
*7カ国共同研究・・・日本・アメリカ・オランダ・フィンランドイタリア・ユーゴ・ギリシャ

地中海食とDASH食の共通項が見えてきました。DASH食のレシピは地中海食や和食とほぼ同様と言っていいでしょう。その共通項は「赤み肉(牛・豚)や乳製品をほとんど摂らない」ということです。近年、米国では赤み肉の摂取量が激減しており、ハンバーガーが売れなくなっています。米国心臓病学会と脳卒中学会が高血圧・脳卒中イベント予防のための共同ステートメントを出しましたが、その背景は赤み肉や乳製品の「高摂取」は高血圧・肥満・糖尿病を誘引し、心臓・脳血管系のイベントリスクを高めるためです。
トマトとオリーブオイル、地中海沿岸エリアの一人あたりトマト摂取量は日本のおよそ5倍~10倍。ですから、いかにトマトが日常食かはお分かりいただけると思います。日本食との違いにはトマトとオリーブオイルの摂取量の違いがあり、共通項は動物脂肪(油脂)、乳脂肪をほとんど摂らないことです。日本食が高品質油脂のオリーブオイルをうまく利用できればさらに豊かな食生活になりそうです。アメリカが経験している健康と食生活の課題は日本にも当てはまります。私たちは日本食が地中海食と並んで大変優れた健康食であることを再確認したいものです。

                                  (第37回 完)
posted by 高原裕一 at 20:18| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月11日

第36回 リコピンフォーラム「高血圧・脳卒中予防ガイドライン」

第36回 『高血圧・脳卒中予防ガイドライン

先頃、米国心臓協会(AHA)と米国脳卒中協会(ASA)のガイドライン(指針)が改定され、予防医学として地中海レシピが推奨されています。近年、海外はもとより日本でも地中海レシピの評価報告が相次いでいます。

1. 米国心臓協会(AHA)と米国脳卒中協会(ASA)のガイドライン(指針)
脳卒中は脳出血と脳梗塞の両者を包含する脳疾患イベントです。脳卒中は日本も米国も、がん・心臓病とともに3大死亡原因になっています。高血圧症・動脈硬化症・高コレステロール血症・肥満などを放置すると心臓病・脳疾患などのイベント発症につながるため、コントロール(予防・治療)が必要な病気です。高血圧症という病気は喫煙(タバコ)の生命リスクとほぼ同程度であり、脳卒中(脳梗塞・脳出血)リスクは高血圧症、高コレステロール血症とパラレルともいえますので十分な健康管理が必要です。今回、米国はAHAとASAが共同ガイドライン(予防・治療指針)を策定しガイドラインに予防医学として「地中海食、DASH食の推奨」が盛り込まれています。
米国は1980年代、がんや糖尿病など生活習慣病を「薬で治らない肉食中心の食原病」とし、食生活への警鐘、改善するためのデザイナーフーズ計画(DFP)を公表しました。がんの発症予防を目的に、一日5皿(350g)の野菜・果実の摂取運動(5 a Day運動)が全米で啓蒙されたわけです。その後、米国ではがん発症率が今日まで低下し続けています(日本は野菜の摂取量が低下し、がん発症率は上昇)。今回のガイドラインに盛り込まれた食生活における地中海レシピ、DASHレシピの推奨は心疾患・脳疾患イベントに関わる高血圧症、肥満症の予防を目的としています。日本でも食の欧米化、生活習慣病の増大が顕著ですので大いに参考にしなければなりません。

2. DASH食は日本食?! 野菜・果実を増やし、赤み肉・乳脂肪を減らす
DASH (=Dietary Approaches to Stop Hypertension)とは、高血圧を予防する食生活を意味する用語です。このDASH食は全米で1980年代に取り組んだデザイナーフーズ計画の発展ともいえ、伝統的肉食(動物脂肪)中心の食生活を改善することを推奨しているわけです。
DASH食のレシピとして 野菜・果実・豆類・魚介類・海藻類・全粒粉(パン)を増やす。肉類(牛・豚)・ソフトドリンク・ソーダ類・甘菓子を減らす」が骨子です。この背景には 「カラダによくないものを減らし、カラダにいいものを増やす」という考え方があります。高カロリー・高脂肪(肉食)を抑制(=低カロリー・低脂肪を推奨)し、ビタミンやカリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル類(無機質)とファイバー(食物繊維)の栄養機能成分とたんぱく質の高摂取を推奨しています。こうしてみるとDASH食は日本食(伝統的)との共通項が見えてきます。私たち日本人が日本食より米国発の代表的なジャンクフード(高カロリー・高脂肪・低栄養)であるハンバーガーに夢中のときに、米国では日本食のようなDASH食でヘルスケアに取り組んでいるのです。日本食が健康のために優れたレシピであることをこの機会に再確認したいものです。(写真2 DASH食ピラミッド)

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3. 飽和脂肪酸(動物油)と不飽和脂肪酸(植物油)
地中海食の研究報告はこれまでもご紹介してきました。地中海食・DASH食・日本食には共通することがあります。それは「肉料理、あるいは乳製品がメインディッシュではない」ことです。動物油の飽和脂肪酸を摂らないレシピであることが共通しています。肉(牛・豚)や乳製品(バター・チーズ)に含まれる動物脂肪は飽和脂肪酸(融点が高く、常温で固型)であり、LDLC(いわゆる悪玉コレステロール)を増産し、アテローム性動脈硬化を促進しますホルモンや細胞壁などの形成にコレステロールが必要なのですが、過剰摂取は問題になります。脂質は概ね20%〜25%以下とし、必須脂肪酸n3系(αリノレン酸/EPA/DHA)やn6系(リノール酸/アラキドン酸)など、融点が低く、常温で液体の不飽和脂肪酸を中心に摂るようにしましょう。また、飽和脂肪酸(動物脂肪)は総脂肪酸の30%以下となるよう、バランスをよく考えることです。
また、オリーブ油は融点が低い(マイナス5〜10℃)不飽和脂肪酸、オレイン酸(70〜80%)です。植物油(不飽和脂肪酸)は酸化しやすいのですが、オリーブ油(オレイン酸)は極めて酸化しにくいのです。また、n6系リノール酸がHDLCの合成を抑制することが明らかとなり、その摂り過ぎに注意喚起されました。変わってオリーブ油(オレイン酸)に注目が高まってきていますが、オレイン酸(オリーブ油)は「HDLCを増加させ、LDLCを抑制する」ことがわかっています。
動物脂肪(飽和脂肪酸)は健康上もっとも警戒するべき油脂成分ですが、「植物油」でもヤシ油・パーム油はほとんど飽和脂肪酸ですから、動物油脂に近い(融点が高い、常温で固形)ことは知っておきたいことですパーム油を食品・健康食品・サプリメントの原料にした製品も多く、注意が必要です。パーム油は工業油脂、洗剤、界面活性剤で多用されており、食品原料としてあまり好ましいとはいえません原料表示に「植物油」と記載された製品(サプリやスナック菓子など)のほとんどがパーム油と考えられます。植物油でありながら動物油と同等(飽和脂肪酸)ですから、他の植物油(不飽和脂肪酸)とは根本的に異なっています。由来植物を明記せず植物油とだけ記載していることが消費者に誤解を与え、混乱させているとも思われます。オリーブ油・サフラワー油・ゴマ油・大豆油・米糠油など、由来植物が記載された製品を選ぶのが安心でしょう。

4. 地中海食と日本食、DASH食
地中海食は健康維持のさまざまな観点から高い評価を得ています。食物の栄養は、炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質をビタミン・ミネラル・繊維質などの機能成分と酸素で生命エネルギーを合成していることはこれまでお話しました。そして、高血圧・心臓病や脳卒中の予防のためのガイドラインに地中海食が具体的に盛り込まれたことは大変大きな意味をもっています。
地中海レシピはトマト・オリーブ油をベースに、野菜・魚介・鶏肉・豆類などを混載して煮込むのが基本です。地中海沿岸やメキシコ、南米などでは日常の家庭料理です。このレシピはトマトとオリーブオイルがベース(出汁)になっているわけです。世界的にみると、日本のようにトマトをそのまま生食するのは稀で、ほとんどがレシピのベースで使われます。トマトにカロテノイド成分が多く含まれる(リコピン・ルティンほか)ことを古くから知りオリーブオイルで溶かす調理法が発展したものと思われます。トマトの生食、トマトジュースからは、リコピンなど脂溶性カロテノイド成分は吸収できません(水溶性ビタミンは吸収できます)。地中海食では牛・豚など赤み肉、バター・チーズなどの乳製品がありませんから地中海食に動物由来の飽和脂肪酸はない(鶏肉など白身肉はあり)のです。

さて、日常食として魚介を世界で最も食しているのは日本です。近年は日本のお鮨が欧米にも拡大していて、今やお鮨の本籍はどこの国か?!と思うほど、海外ではお鮨(日本食)が圧倒的な人気です。日本は歴史的に魚介をタンパク質の主な摂取源としてきており、牛・豚肉は戦後の食物です。また、かつてはクジラ肉もあり、イナゴ・バッタや蜂の子、さらにスズメやどじょう、ヘビなどの肉もタンパク源になっていたのです。現在も、京都・伏見稲荷神社の境内にはすずめの焼き鳥店があり、宇治で補獲されたスズメの肉を食すことができます。どうじょうは柳川鍋、イナゴ・バッタ、蜂の子などは佃煮があり、地域によっては馬肉もあります。
どうあれ、日本は日常的に赤み肉(牛・豚)をほとんど食してこなかったといえます。戦後、牛肉・豚肉の輸入量がジェットコースターのようにうなぎ昇りに拡大してきました。今では牛・豚肉から高栄養・高エネルギーを摂ることができ、タンパク質不足は解消、栄養不足が原因の病気はほぼなくなり、身長、体重、寿命は戦後一貫して伸び続け、かえって動物性脂肪の高摂取が健康上の問題になっています。ハンバーガー店、焼き肉店はどこの街角でも目にする光景になっているほどです。その一方、味噌汁、煮物、煮魚、焼魚、納豆、漬物など・・・日本の伝統レシピは牛ステーキなど肉料理との間で、陳腐でありふれた食事かのような錯覚を覚えがちなのは私だけでしょうか?。元経団連会長の土光さんは、はんと味噌汁、あとはメザシと漬物(梅干し)があればいいと書かれています。なるほど・・・と思うわけです。何事も「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」です。

5. 動物肉・乳脂肪(飽和脂肪酸)は控えめに!
米国では1980年代のデザイナーフーズ計画も、今回のガイドライン策定に盛り込まれたDASH食に関連しても、膨大な健康人(がん、心臓病・肥満・脳疾患に罹患していない人)の食生活を長年(10〜20年)調査しています。端的に言えば、がんを発症した人や心臓病・脳疾患を発症した人は野菜の摂取量が少なく、動物脂肪(赤み肉)の摂取量が多いと言えます。逆に言えば、そうしたイベントを発症しない人は野菜をしっかり摂っている、動物脂肪(赤み肉)・乳脂肪は控えめにしているということなのです。これが200万〜300万人の母集団調査ですので説得力に富んだ研究になっています。その結果、地中海食やDASH食が高血圧症・動脈硬化症・肥満症・心臓・脳疾患イベントの予防で推奨されたというわけです。日本の一人当たりの赤み肉消費量は米国の約2分の1ですが、脂質のバランスは考えなければなりません。既に、米国人の誰もが日本人より動物脂肪・乳脂肪の摂取量が高いわけではなく、ベジタリアンは多数います。TVに映る米国の政治家や企業リーダーに肥満者がいないことにはお気づきでしょうか。動物性脂肪(飽和脂肪酸)の過剰摂取は大腸ガンとの関連性も強く指摘されています。過剰摂取は要注意といえるでしょう。
*参考  一人あたりの赤み肉(牛・豚)の年間摂取量(2011年)
      日本      牛肉11Kg  豚肉20Kg   合計31Kg  男女平均寿命84歳(世界TOP)
      米国       牛肉37Kg  豚肉27Kg   合計64Kg   男女平均寿命79歳
      (2014報告 牛肉24Kg
             中国        牛肉 4Kg    豚肉38Kg   合計42Kg   男女平均寿命75歳
      韓国       牛肉13Kg    豚肉28Kg   合計41Kg   男女平均寿命81歳
      アルゼンチン 牛肉53Kg   豚肉 4Kg   合計57Kg    男女平均寿命76歳
      香港      牛肉23Kg   豚肉67Kg   合計90Kg     (不明) 

過剰な動物脂肪・乳脂肪はLDLCを増加させ、HDLCを破壊し、動脈硬化を促進させる、エネルギー代謝率(変換率)が低いなど・・・健康維持のために飽和脂肪酸(動物脂肪・乳脂肪)の過剰摂取に十分な注意が必要です。飽和脂肪酸(動物脂肪・乳脂肪)、多価不飽和脂肪酸(n6系植物油リノール酸・n3系植物油αリノレン酸魚油EPA・DHA)、一価不飽和脂肪酸(n9系オリーブ油・ナッツ類)をバランスよく摂る、それが心臓・脳疾患イベントの予防につながる大切な視点です。
なお、米国ではデザイナーフーズ計画の国民運動以来、赤み肉の消費が年々減少し(牛肉消費量 1976年43Kg ⇒ 2014年24Kg)、近年はDASH食推奨もあり、動物油脂(脂肪)の摂取量はさらに減少しています。(鶏肉などの白み肉は拡大)
                                             (第36回 完)


posted by 高原裕一 at 19:17| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月16日

第35回 リコピンフォーラム「リコピンのある食生活と予防医学」

第35回 『リコピンのある食生活と予防医学』

1. カロテノイドとポリフェノール―抗酸化力
リコピンなどのカロテノイド成分は油に溶ける成分ですから、私たちは日常から意識しないと不足しがちです。それに対し、カテキンなどポリフェノール成分は水に溶ける成分のため(緑茶、ジュースなど)、口にする機会が多く、そう意識しなくても摂っています。同時に、ポリフェノール成分は体内滞留時間が短いので頻繁に(一日5〜6回)摂る必要があります。また、リコピンは脂溶性(油性)成分ですから、トマトジュースを飲むだけでは摂れません。一方、脂溶性(油性)のカロテノイドは滞留時間が長いものの、一日に摂る機会はポリフェノールと比べて少ない(食事のときくらいでしょう)ため、食事ではカロテノイド成分の摂取を意識しましょう。ビタミンC(水溶性ビタミン)とビタミンE(脂溶性ビタミン)の関係とよく似ています。ポリフェノール成分を含んだ野菜や果実は多いのですが、カロテノイド成分はポリフェノールほど多くの野菜、果実に含まれません。カロテノイド成分は日頃から少し高い意識が必要になります。
【カロテノイドの含有野菜・果実類】
リコピン・・・・・・・・・・トマト・金時ニンジン・カキ(柿)
ルティン・・・・・・・・・・・・トマト・ホウレンソウ・ブロッコリー・キャベツ
βクリプトキサンチン・・ミカン(かんきつ類)
βカロテン・・・・・・・・・・・カボチャ・ニンジン
フコキサンチン・・・・・・モズク(カッソウ類)

どちらも活性酸素の中和・消去能力が高く、ポリフェノールは比較的軽度の水溶性活性酸素を、カロテノイドは軽度〜重度の油性活性酸素、水溶性活性酸素のいずれをも中和・消去する働き(抗酸化力)があります。特に、リコピンは日常食物(トマト)でもっとも高い抗酸化力(ビタミンEの103倍)をもつ栄養機能成分です。
ここで、「活性酸素を中和・消去する」働きとは、ポリフェノールやカロテノイド自らが活性酸素と反応して活性酸素を中和してしまう働き(酸素と水に還元、無毒化)です。その結果、活性酸素が生体の細胞を攻撃しなくなります。体内にはそうした防御成分(SODなどの酵素)がありますが、現代社会は内でも外でも活性酸素が大量に発生し、私たちのカラダには活性酸素が蓄積しています。ですから体内の中和・消去成分だけでは活性酸素を処理(無毒化)、防御しきれないわけです。そのため、そうした働きをもつカロテノイドやポリフェノール、ビタミンC、ビタミンEなどを食事で補う必要があります。活性酸素は猛毒(毒性が強い)で、がん・アレルギー・リウマチ・心臓病などの発症に関与しているという報告があります。私たちは活性酸素の被害を軽減するために、脂質(お肉)中心でなく、カロテノイドやポリフェノール成分を含む野菜中心の食生活を充実させるべきといえるでしょう。合成成分原料の化粧品でも被害が発生していますが、天然の美白成分、リコピンは注目の美白・防御成分なのです。肌荒れ、皮膚のカサカサは活性酸素の被害ですから、天然リコピン(カロテノイド成分にはω9系 オリーブオイルが必須)に目を向けてみる必要もあります。この美白化能はリコピンがもつ抗酸化力です。

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2. オリーブオイル―ω9系オレイン酸の脂肪代謝力
オリーブオイル(オレイン酸)は栄養学的には必須脂肪酸とされていませんが、純度が高く、健康維持には極めて付加価値の高い脂肪酸です。先頃、米国・イリノイ大学から発表された研究報告は、このオリーブオイルの付加価値を改めて意識させる研究内容でした。オリーブオイルとパルチミン酸オイル(動物油・パーム油など)の比較研究ですが、心臓病を患ったラットにオリーブオイルを与えたところ、心筋細胞内の血流、脂肪代謝が大幅に改善、正常化しました。同時に、パルチミン酸オイルを与えたラットの心臓では脂肪代謝が乱れ、有害な脂肪代謝産物を生み出していることが報告されています。
心筋細胞には生命エネルギーをつくる(ATPを合成する)ミトコンドリアが多く集まり、脂肪酸はこのプロセスにエネルギー合成原料を供給しています。パルチミン酸はエネルギー産生が不十分で、ミトコンドリアのエネルギー合成(ATP合成)が十分に行われないわけです。その結果、心筋細胞に必要なエネルギーが供給されずに心臓病につながったわけです。オリーブオイルは代謝力が高く、ミトコンドリアにしっかり取りこまれ、エネルギー合成(ATP合成)を高めています心臓や脳はエネルギーをもっとも消費する臓器であり、多くの病気で細胞(ミトコンドリア)内エネルギー産生が低下していることもわかっています。私たちのエネルギー産生(代謝)では「良質の油脂成分」が必要です。

3. コエンザイムQ10―エネルギー産生のコントローラー
「基礎代謝」という言葉をご存じだと思います。特に活動せず、寝ているだけでも生命維持に必要なエネルギー代謝のことです。「何もしないで、ただ寝ているだけでもお腹が空く」のは、このエネルギーが消費されるためです。この生命維持エネルギーは30歳代〜40歳代で男性が1,400〜1,500KCal、女性が1,100〜1,200KCalです。10歳代〜20歳代は男性が1,600Kcal、女性が1,300Kcalと高く、逆に50歳代〜60歳以上で男性が1,300KCal、女性が1,000Kcalとされ、基礎代謝エネルギーは一日に必要な総エネルギーの70%程度です。また、心臓や脳は特にエネルギーを必要とする臓器で、運動する人は筋肉もエネルギーを大量に消費します。そのため、エネルギーを多く必要とする臓器にエネルギーを産生する細胞組織、ミトコンドリアが集まっています。そのミトコンドリアはエネルギー源となるATP(アデノシン3リン酸)という酵素(こうそ)が合成され、再び破壊(分解)されますが、私たちの生命活動エネルギー源はそのATPの破壊エネルギーす。ミトコンドリアではこの生命エネルギーとなるATPの合成と破壊(分解)を生きている限り繰り返しています。
さて、ミトコンドリアのエネルギー合成(ATP)は私たちが食べた食物と酸素が原料です。ただ、エネルギーになるまでに多くのプロセス(生化学反応、酵素反応)があり、その最終段階をコントロールするのがコエンザイムQ10という補酵素(ほこうそ)です。コエンザイムQ10(ビタミンQ)はビタミン類似の働き(触媒反応)をしますが、エネルギー合成能力を高めたり低下させたり、調整してします。体内でも合成されるコエンザイムQ10ですが、エイジング(老化)とともに産生能力は低下しますので、食事で意識してコエンンザイムQ10を多く含むイワシ(青み系)などを摂るようにしましょう。イワシは栄養学的にコエンザイムQ10のほか、DHA、EPAなどを含むお魚の王様です。

4. 「地中海料理」―リコピン(トマト)とオリーブオイル
国立がん研究センターの予防医学研究の責任者、津金昌一郎先生が地中海沿岸エリアは心臓・血管系の病気やがん発症率が低いことなど、地中海料理のレシピにそのヒントがあると述べられています。病気は(特にいわゆる成人病:肥満・高血圧・心臓脳血管系病・がん)は突然病気になるわけではありません。「長い年月の食生活をはじめライフスタイルの結果」であることを十分認識したいものです。食生活が健康維持にもっとも影響があるわけですが、近年ではコンビニフード、ジャンクフードが隆盛で、もしそんな食生活が日常なら10年後、20年後の健康に大いなる危険が迫っていると言わざるをえません。どうか、食品素材がわかるレシピを充実させたいものです。
さて、地中海料理は「混ぜレシピ」です。現在の日本は「混ぜレシピ」がずいぶん減ってしまったように思いますが、お隣の韓国料理の基本は「混ぜレシピ」です。地中海料理はトマトとオリーブオイルがベースで、良質のカロテノイド(リコピン)をオリーブオイルで溶いて魚介やお肉を組み合わせる「いわば鍋料理」です。それほど手をかけることもありませんので、週に1度はぜひ地中海レシピにチャレンジしましょう。
                                           (第35回 完)


posted by 高原裕一 at 12:14| ダイエット&ウエルネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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